レベルが……めっちゃ上がっていた!
「ふあああ……眠いヤバい起きたくない……」
俺は布団から身を乗り出し、枕元の腕時計を確認した。
時刻を見ると……よし、まだ6時半だ。寝れる。
それにしても昨日は大変だった。メシを食いに食堂へ向かったはいいが、酒を酔ったオッサン連中から無理やり飲まされたのだ。
謝絶を試みたものの、オッサンには効くハズもない。
当然、未成年の俺は酒慣れなんてしているワケなく、見事にグースカ寝てこの部屋へ運ばれた。
くっそ、オッサンどもめ。
「痛ってえ……ちくしょう……」
俺はまだ痛む頭を押さえながら、再び布団へと入る。
なんてこった。これじゃあ二日酔いじゃねえかよ。
あー、布団の中気持ちいい。あったかい。もうずっとこのままでいたい……
「ぎゃぶほっ!?」
そう思ったのもつかの間、俺の脇腹にコハクの足がクリーンヒットした。
「が……はっ……」
何度も攻撃は食らっているのでだいぶ体がタフになった俺だったが、今日の一撃は強いな。
ぐっ……やめてくれよ、ただでさえ酒のせいで気持ち悪いのに。
俺は出そうになったアレをギリギリで食い止め、ふうと深呼吸した。もうこれで吐きそうになるのは何度目になるのだろう。
「ふあ……ああ京夜、おはよう。目覚めは良かったか?」
「ええ、誰かさんのせいでとっても最悪な目覚めとなりましたよ」
再び寝る気にもなれなくなってしまった俺は、洗面所の方へ行って顔を洗い始めた。
ぐーっと体を伸ばすと、俺はコハクに質問する。
「なあ、ティールは魔物モンスターを倒しに行くとか言ってたけど、出現場所は分かってんのかな? ホラ、俺装備だってまだ初心者用だし、買い替えとかもしたいんだけど……」
「さあな。でも魔物モンスターに関してはちょうどいい機会じゃないか。このチームの目標は『魔物モンスターを倒す』らしいじゃないか。 ……装備は……まあちょっと考えてみた方がいいかもな」
そう言ってコハクは、小さく鼻で「フッ」と笑った。
待て待て待て。今のはおかしい。
俺たちのチームのことについてしっかり学んでくれていたのはいいけど、鼻で笑うのはおかしい。
「なあ、なに今の『フッ』って。ひどくない?」
「いや。私は鼻で笑ったりなんかしていない」
「笑ったろ」
「いや、私の身にそんな覚えはない」
そう言ってコハクは、プイと気まずそうに目を逸らしてしまった。
くそっ、確かにコハクは結構キレイなそれっぽい装備着てるんだけどさ。
「そうだ京夜。京夜は自分のハンターカードは確認したか? 最近はクエストに結構行っているから、レベルは上がっていると思うが……」
「ああ、あったなそんなのも」
鼻で笑われるぐらいじゃもう傷つかなくなっていた俺は、すぐにズボンのポケットからハンターカードを取り出した。
そのカードを、見てみると。
「え? レベル……38……?」
予想外の光景に目を奪われた俺は、固まったまま動けなくなっていた。
え? 結構ヤバくない? レベル38って。
「おお!? すごいじゃないか京夜! 今の私と2レベルしか変わらないぞ!」
そう言ってコハクが差し出してきたカードには、「レベル40」と書かれていた。
すげえ、俺。
「なあ、なんで俺こんなレベル上がってんの!?」
「多分、たくさんモンスターを狩ったからじゃないか? レベルが上がるには、モンスターを倒した後の経験値が必要になってくるんだ。たくさん狩れば狩るほどレベルが上がる」
「へー、そうなのか……」
確かに俺は、日々クエストへと励んでいた気がする。
3人置いて来てまでクエスト行った日もあったしなあ。こんぐらいのレベルになっていてもまあおかしくはないか。
「うーん……あ、おはようございます二人とも」
「おはよう……」
俺が一人で興奮していると、ベストタイミングで二人が目覚めた。
カードを俺が二人の傍に持っていくと、二人は目を丸くする。
「は、はあっ!? なんでこんなに上がってるんですかっ……私の方が最初の頃はまだレベル高かったのにっ……」
「なんで!? なんでこんなにレベル上がってるのきょーや!!」
二人が驚愕しながら詰め寄って来たので、俺は慌てて説明する。
「い、いやあ……日々俺は努力していたからな。毎日クエストも頑張ってたし……」
「うう……京夜さんばっかりずるい! 私レベル36なのに……京夜さんに負けた……」
いや、ずるいとかの問題じゃねーだろ。
ふはははは、勝った。
……いや、ここでさらに自慢するのはちょっとクズ男すぎるか。ほどほどにしなくては。
「まあまあ、お前らも頑張れよ。モンスターを倒した分経験値も貰えるんだろ?」
「うう……私だって! きょーやに負けないもん!」
そう言ってアークは、べえっと可愛らしく舌を出した。
「べえっ」……ヤバいっす。(笑)
引き続きよろしくお願いします!