一日、終了! 疲れた……
「ふっ……どうだ? これで身動きができなくなるだろう?」
「いやあの、カッコつけてるとこ悪いんだけど、ツタって燃えるよね?」
ドヤ顔をしていたガーブだったが、バカなんだろうか。いや、バカだ。
氷はみるみる内に溶けていき、ツタも同時に全て燃えていく。
「なっ……なぜだ!」
「いや、バカなの!? 燃えるでしょ、フツー!!」
俺が叫んでいる間に、ティールが剣を構えた。
そうだよ。最初からコイツに倒してもらえばよかった。
「はあ……後は任せたぜ、ティール」
「了解! 俺カッコいい……」
最後の一言がなければもっとカッコよかったけどな。
ティールは青色の剣を片手に、ヘビーファイアドラゴンへと突っ込んでいった―――――――――
「ああもう……なんで簡単なクエストなのにこんな疲れるんだよ……」
ティールたちが取ってくれていた旅館の中にて。
俺は部屋の机にぐでっと突っ伏しながら、そんなことを呟いていた。
「まあまあ。倒しただけ良かったじゃないですか。報酬も貰えたんですし」
ライアが報酬金の入った袋を見せながら言った。
俺が疲れている原因として挙げられるのは、魔法の使い過ぎだろう。
2匹目のヘビーファイアドラゴンの個体はなぜか体から出す炎や熱気の量が多く、まともに近づくことができなかった。そのため俺が魔法で何とかティールの手助けをしたんだが……
初級魔法とはいえ使いすぎると体力を持っていかれるようだ。体全体がダリイ。
「ふっ……体のだるさなら私だって同じだよ? きょーや、男ならそのぐらい我慢だ我慢!」
「こういう時だけ都合良く男を強調するんじゃねえよ……」
ああもうホントダリイ。なんとかして体力を回復させたい。
「おーいお前ら! メシだぞー!!」
ティールのデカい声が俺たちの部屋に響き渡った。
耳に響くからちょっとやめていただきたい。
「メシ? ああ……そうなの?」
「おい京夜ー? もっとテンション高くいこうぜ? な? な?」
「お前は最後活躍できたから機嫌いいんだろうけどさ……今の俺の身にもなれよ」
「いやー♪ いいじゃん別にー♪ 一緒に悪戯した仲でしょー?」
ダメだコイツ、話が通じねえ。
まあ確かに悪戯は成功したけどさ。ピピのおかげだけど。
ピピはというと、部屋の隅っこでうまそうに高級餌をほおばっている。
旅館なのに、動物禁制じゃなかったことに驚いた。
「というか京夜は、なぜ急にピピに餌を買ってあげたりしたんだ? それも高級の。何かいいことでもあったのか?」
「あ、ああ、まあな。それはその……ちょっとした気まぐれだよ! よしお前ら、メシ食いに行くか?」
「なんか怪s……」
「行くぞオオオオ!!」
俺はライアの言葉をさえぎって、部屋の外へと出ていった。
俺以外の3人は大層ガーブのことを気に入っていたみたいだし、ここでバラしたら……うん、想像したくもないです。
というか、俺はそれよりもピューラのことが気になるんだよなあ。
なんかあの子やっぱ怖いし、それでいて鋭い。もっと情報を知る必要がある。
……あ、そういえば。
「……なあティール。ピューラが俺たちの悪戯のことについて、なにか訊きに来なかったか?」
「あーそれ! マジビビった! 何とか隠し通したぜ! ……てか、なんでお前知ってんの?」
「いや、俺も訊かれたもんでな……」
俺たちは小声で話し合いながら、食堂へと向かった。
……まあなんにせよ、今日は終わりと言ってしまってもいいだろう。
俺は明日に備え、気を新たに引き締めるのだった。




