ヘビーファイアドラゴンが現れた!コマンド?
「いました! アイツです!」
ライアが指さした先には、確かにヘビーファイアドラゴンの姿があった。
先ほどティールが倒したのと同じぐらいの大きさである。
「おいアーク、お前一応水の魔法使いなんだろ? 倒してみろよ」
「むう……そう言って他人に責任を押し付けてくるあたり心がイケメンじゃない!」
「余計なお世話だ」
俺はメタルソードを引き抜き、攻撃体制へと入った。
……最近思い始めたんだけど俺のこの装備、初心者向けのヤツだよね? 俺だって全くのド素人ってワケじゃないし、そろそろ別の装備に変えてもいいかもしれない。
せっかく2つ職業を持ってるんだから、もう少しカッコいい装備にしたいところだ。
そういえばライアが「慣れるには時間がかかる」とか言っていたな。俺、教えてもらってからすぐに使えるようになったんですけどお! すごくない!?
……すみませんでした。俺が教えてもらったのは簡単に覚えられる初級魔法ということを今思い出しました。ごめんなさい。
俺が過去に教えてもらったことを振り返っているとふと、アークがこちらにチラチラと視線を向けてきているのが分かった。
「……どした?」
「いや、体力使い果したらきょーやはおんぶしてくれるのかなーって」
「ええ……? 体力使わずに何とかならないの……?」
「無理。いくら相性がいいとはいえ、初級魔法のみでアイツを倒すのは不可能! だからおんぶは必要不可欠!」
……いや、なんか偉そうに言ってるけど体力つけろよ。
ある意味ティールの方が魔法使いに向いていたんじゃないだろうか。キモイけど。
「分かったよ……お前もうちょっと体力つけろよ? そんな調子でいたら絶対……」
「あああああ!! 聞こえない聞こえない!」
アークは両耳を塞ぎ、ブンブンと首を振った。
子どもを心配するお母さんのような口調で言ってみたのだが、どうやら失敗だったようだ。
「むう……最近京夜さんはずいぶんアークと親しげですね? そうなんですね?」
「ああ。とても仲がよさそうに見える」
と、急にライアとコハクがそんなことを言ってきた。
仲がいいのか悪いんだか。他人から見たらリア充とか言われる光景になってしまっていたんだろうか。
「そんなことねえって。てかどうした? 急に」
「「いいいや!? なんでも!?」」
……何なんだろう。まあいいや。
「おい京夜。仲良くしているところ悪いんだが、そろそろ攻撃してもいいか?」
「お前までそんなこと言うのかよ……てかアーク。はよ撃て。おんぶしてやるから」
「むう! 言われなくてもそうしてる! 『ウォーターデッド・ファイナルフリーズ!!』」
その声と同時に、ヘビーファイアドラゴンに大量の水が降り注いだ。
パキパキという音を立て、ヘビーファイアドラゴンは冷凍されていく。
「……オイ。いきなり必殺魔法かます奴がいるか!? それにヘビーファイアドラゴンの体は熱でおおわれてるんだ! 氷なんかすぐ溶けちゃうぞ!」
「ふっ……これこそが我が力……」
ティールが叫んでいるのをお構いなしに、アークはバタリと地面に倒れた。
ヤベえ、マジかよ。このままじゃ復活するじゃん。
ヘビーファイアドラゴンを包んだ氷は、今にも溶けそうになっている。何とかしないと……
「『リーフネス・ファイナルバインド!』」
そのガーブの一声で、氷は無数のツタに絡まれた。