女の子に疑惑をかけられた! HPマイナス10!
「いやー、さっきは面白かったなー!」
「ピピ大活躍だったな! 後で高級な餌買ってあげよう」
俺たちは再び先回りして、ガーブたちが来るのを待っていた。
いやー、マジでスッキリした。あの慌てっぷりったらもう……ね。
「はあ……はあ……何なんだよもう……」
声がした方向を見ると、息を荒くしながらこちらに向かってくるガーブの姿があった。
俺たちは「何もなかったですよ?」感を装い、ガーブへ話しかける。
「あれ? どうしたのガーブ? ボロボロだけど……?」
「ホントだ。どうした? ガーブ」
内心爆笑しながらも、俺たちはガーブを心配してあげた。
ふっ、体中ボロボロじゃないか。あのイケメンのガーブ君が。
「君たち……声が聞こえたけど、近くにいたんだろ? 助けてくれてもよかったじゃないか」
「え? なんのことー? 全然覚えてないんですけどおー?」
「何言ってんのガーブゥ?」
はっはっは。実に愉快だ。
これでガーブの「カッコいいイケメン魔法使い」感は失われたな。
「ピピがいきなりガーブに襲ってきたんだよ。私が『ダメッ』って叱ってあげた」
……え?
見るとそこには、アークに捕らえられグッタリしているピピの姿があった。
ああ、本当にすまん、ピピ。後で絶対に高級な餌買ってやるからな。
一体どんなお仕置きをされたんだろう。ピピの有様を見る限り、相当ボコボコにされたようだ。
「ふう……まあもうそれについては置いておいて。ヘビーファイアドラゴンはどうなったんだい? 僕たちが見た限りは一匹も見つからなかったんだが……」
「ああ、一匹だけ俺たちが仕留めたぜ! ホラ!」
そう言ってティールが見せたクエスト依頼書には、確かに「ヘビーファイアドラゴン1匹討伐完了」と書かれていた。
やっぱ便利だなー、この技術。何匹倒したか確認できるじゃん。
「へえ……僕たちよりも先に倒すとはね。何か秘策でもあったのかい?」
すみません、今のアンタの状態で見下されても全く威厳を感じないっす。
「秘策なんてねーよ。ただ、俺は水の剣士だからな。相性が良かったんだ」
「……え? 剣士の仕事に属性なんかあるのか?」
「は? 何言ってんだお前。どの職業にも属性・必殺技はあるぜ? 体力使うけどな。ホラ、俺って自分で言うのもなんだけど筋肉あるじゃん?」
「へえ……」
そう言ってムキムキと筋肉アピールをしてくるティール。暑苦しい。
それにしても剣士に属性があるなんてなあ。俺、必殺技すら使ったことないんですけど。
今度覚えられたら覚えてみるか。
「じゃあ取りあえずもう一匹を探しに行こうか。京夜とティールに2匹も狩られてしまっては僕の気が済まない」
そう言ってスタスタとガーブは先に行ってしまった。意外と負けず嫌いなんだな……
俺がその後をついていきながら、ボロボロになって飛んできたピピを優しく撫でていると。
「……ガーブに悪戯したのって、京夜さんなんですか?」
と。
震え上がるほどの小さな声で、耳元に囁かれた。
「うわああ! な……何!?」
俺が慌てて振り返ると、ティールのもう一人の仲間、ピューラが立っていた。
この子の存在完璧に忘れてた。怖い。怖いから。
「そのままの意味です。さっきガーブに悪戯をしたのは、あなたじゃないんですか?」
「い、いや!? 違うよ!? なんで俺がそんなことしなきゃいけないの!?」
「……そうですか。一応ティールにも聞いておきます」
そう言い残しピューラは、みんなが歩いて行った方向へ向かって行った。
危ねえ、バラすとこだった。ここでバレたら間違いなく俺とティールは嫌われる。
……それよりティールは、隠し通すことができるだろうか。外見からして、あんまり嘘が得意そうには見えないしなあ。
「あの子には……要注意だな」
馬車の中での様子からして大人しい普通の女の子だと思ったんだが、予想以上に勘の鋭い子みたいである。
俺はふう、と一息つきながら、みんなの後を追っていった。
「悪魔の俺と異世界魔法」を「あくおれ」でもいいかなあと思い、加えてみました。なんかそっちの方が読みやすいので。
引き続きよろしくお願いします!




