決着の時!
「よし、後はバナナの皮を……って」
草陰に隠れた俺たち。
しかし。
俺が辺りを巡視していると、最悪の光景が目に移った。
「あれって……ヘビーファイアドラゴンじゃね?」
「え? ってうわ! ホントだ! ……どうする?」
くそっ、なんてタイミングで登場しやがる。
かと言って二人でコイツを相手していたら悪戯ができない。どうすれば……
「よし、京夜。お前一人で悪戯を仕掛けろ。俺にかまうな」
そう言ってティールはヘビーファイアドラゴンへと突っ込んでいく。
「はあ!? 何言ってんだよ、俺たちはいつも……一緒だろうが!!」
「くっ……いいからやれ! 何もできないよりはいいハズだ! ぐああっ!」
「ティールウウゥゥゥゥゥゥ!!」
ヘビーファイアドラゴンと対峙するティールをよそに、俺は電気魔法をバナナの皮に打ち込んだ。
ありがとう、ティール。この恩は絶対……忘れないぜ!!
「セット完了オオォォ!!」
俺はガーブたちが通る道にバナナの皮を置くと、お風呂の時お世話になった透明マ✕トをかぶり、待ち伏せした。
「ティール! 大丈夫か!?」
「ああ! こんなの……大したことねーよ!」
ティールは迫りくる炎のブレスをかわしながらも、剣で攻撃を入れていた。
……まあ、そんなデカい敵でもないワケだから、簡単に勝てるんだけど。さっきの別れは、ちょっとしたノリです。すいませんでした。
「来たぞ! ガーブだ!」
俺が待ち伏せしていると、遠くにガーブたちが歩いているのが見えた。
幸い、先頭をガーブに歩いているので、悪戯を仕掛けるのに苦労はしなさそうである。
「京夜!」
遠くからティールの声が響いた。
「どうした!」
「ごめん……普通に勝っちゃった」
「うん、もうそのノリいいよ。なんとなく分かってたから」
そこまで言ったところで、俺は口を塞ぐ。ガーブたちに聞こえてしまっては大変だ。
それにしても、ティールの奴中々やるなあ。小さいモンスターとはいえ、ここまで早く倒せるとは。
……ひょっとしたらティールは、俺が思っているよりずっとすごいハンターなのかもしれない。
「おっしゃあ! 来たぞ! 転べえええええ!!」
ガーブの足が、バナナの皮に触れようとした瞬間――――――――――
ヒョイッ。
ガーブは、それを避けやがった。
……おかしいな。もう一回やってみよう。
俺は透明マ✕トを再びかぶり直すと、バナナの皮を持ち再びガーブの足元へ。
ヒョイッ。
またもやガーブは、それを避けやがった。
……え? 何コイツ。ちょっと怖い。
そう思った俺は、『プチ・サンダー』を加えたバナナの皮をガーブの顔面へと投げつけた。
「ん? ……痛っ」
……ええ。
反応薄っ。
するとティールが俺の今の状況を察したのか、木を必殺技で切り、俺に渡してくれた。
もうこうなりゃヤケだ。
「うおらああああああああ!!」
もう普通に声が出てしまっているが、気にしない。
俺は再び『プチ・サンダー』を木に加えると、ガーブへと襲い掛かった。
「ん? うわあっ! 何!?」
しかしまたまたガーブは、それを避けてしまった。
どうしよう、この人悪戯が効きません。
俺はバナナと木で悪戯することを諦めると、俺の肩に止まっていたピピに向かって叫んだ。
「やれえ! ピピィィ!!」
「ピ――――――――ッ!!」
甲高い叫び声を上げながら、ピピはガーブの頭へと急接近していった。
空中に浮いたままピピはガーブの頭をつつくと、様々なところへ攻撃を入れていく。
「ぎゃあっ!! 痛いぃ!! 顔っ! 顔はやめ……ひぎゃああああ!!」
叫び声を上げながら、ガーブは暴れまわる。
俺はすぐさまティールのところへ駆けつけると、二人で大爆笑し合った。
「ギャハハハハ!! 見ろよあの慌てっぷり! イケメンが台無しだあ!!」
「はっはっは!! よくやった、ピピ!」
ちなみにさっきの「ピピで攻撃する」という作戦を思いついたのは、完全にアドリブである。
ダメ元でやったのだが、予想に反してピピが大活躍してくれた。
「あれ!? ピピ!? 京夜さんと一緒にいたハズじゃあ……」
「わああああ――――!! ガーブさん、大丈夫ですか!?」
ボロボロになったガーブの姿を拝みながら、俺たちは急ぎ足で撤退した。
勝負は……ピピの勝ちだな! うん。