バカな二人とフェミニスト
「さて、どのクエストに行こうか」
「これなんかいいんじゃない? ヘビーファイアドラゴン2匹討伐!」
俺たち二人はバナナを買うと、ガーブたちと共にクエスト受付窓口へと向かった。
あのフェミニストの慌てる顔を拝めると思うと、ワクワクしてたまらない。
「では、クエストは船での移動となりますので、港へとご案内いたします」
「え? 船で移動とかあんの?」
「はい、クエスト場所が遠いと、乗り物で移動することが多いんですよ」
俺が疑問に思っていると、ピューラが丁寧に説明してくれた。
うん、この子は良い子だ。優しい。
それにしてもティールもティールで大変そうだな。個性的なメンバーが多いし……
まあ、俺たちのチームも負けてないんだけど。
俺は港へと歩いて行くガーブたちを追いかけながら、そんなことを考えていた――――――
「わああ―――――!! 速いですね京夜さん!」
「わおおおおおおおおお!!」
さっきの馬車並みに速い速度で、船は動き続けていた。
うえっ……船酔い……吐きそう……
「京夜、大丈夫か? あと5分ぐらいだと思うから」
「ああ……悪いな……」
そう言ってコハクが励まして来てくれた。しかし俺の吐き気はどんどん増していく。
……ヤべえ、出るわ。
「うっ……かっ……」
「うわあああ! 大変ですみなさん! 京夜さんがあ!」
俺は這い上がって来たアレをギリギリのところで食い止めた。
危ねえ、今のはホントに危なかった。
こんな大勢の人たちもいる中ヤツをぶちまけたら人生無理ゲーになってしまう。
「はーっ、はーっ、はーっ、はー……」
「きょーや、大丈夫……? 顔が……死んでるよ?」
「ぐほっ……大丈夫だからっ……」
俺の顔はいつだってイケメンだ。ガーブにも劣らない……すみません、調子乗りました。
くそっ、アイツは清々しい顔で外の景色を見つめてやがるっ……
やっぱ生まれつき持った体質の差だろうか。俺は17歳の多くを前世で過ごしてきたワケだし、この世界の人間たちと比べたらやはり弱い部分があるのかもしれない。さっきから周りの人たちが不思議そうにこちらを見ているしな。
……ヤベッ、また波がっ……
「げほっ……」
「うわあ! 誰か京夜に水!」
ティールがそう叫んだところで、俺は水をがぶ飲みさせられた。
俺はヤツとの戦いに勝利した。
かなりの悪戦苦闘を強いられたが、やはり水の力によって多少戻されたっぽい。
俺はクエスト内で、スーハーと深呼吸を何度もしていた。
「ああ……森の空気永遠なれ!!」
「……何言ってるの?」
アークに訝し気な目で見られたが、今の俺にはそれに対応する気力が残っていない。
やっぱ森系ダンジョンで良かったわ。空気がキレイ。
そんな環境汚染防止CMみたいなことを思っていると、ふとトントンとティールが肩を叩いてきた。
「お前、分かってるな?」
「……ああ。でももし上手くいかなかったらどうするんだ?」
「その時はその時で、また別の悪戯を考えればいい」
俺がティールの言葉に静かに頷くと、ピピまでもが「ピー!」と鳴いた。
人だけでなく、鳥までもが気に食わないにだろうか。
「みんなー!! ちょっと俺たち用があるから、先言っててくれ! 後で追いつくから!」
「え? うーん……なるべく早く済ませてねー!!」
ピューラがそう叫んでいるのが聞こえるが、ぶっちゃけなんの用もないんだよね。
俺は別の道を通り先回りすると、草陰に隠れて待ち伏せした。
「いやあ、成功するかな!? するかな!?」
「『成功するかな!?』ではない! 成功させるんだ!」
「オオ! カッコいい! 名言だ!」
俺たちはそう笑い合いながら、ティールたちが来るのを待った。
( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)(引き続きよろしくでーす!)




