バカ二人組
「わあ……なんか街とは全然違うんですね……」
村の近辺を歩きながら、ライアがポツリと呟いた。
アルゼ村自体が森に囲まれているような感じになっているので、なんか環境にいい気がする。
あれだな、ゲームの村でもよくあるような村。
「さて、宿ならもう予約しといたから大丈夫だよな。まだちょっと時間あるし……なんかどっか簡単なクエストでも行こうか?」
そう言ってガーブはちらりと自分の腕時計を見た。
その仕草も腹立つ……って言ってるともうキリがなさそうなので思いとどまっておく。
「いいですねー! 小型モンスターでも狩りに行きましょうか!」
「どんな魔法使うのか見てみたい!」
ガヤガヤとガーブたちが騒ぐ中、俺とティールはひそひそと話し合っていた。
「おいおい、なんかガーブの奴、調子乗ってねえか? ちょっとウザいんだが」
「それには俺も同感するわ。なんか腹立つ」
俺たちは横目でガーブをチラッと見る。するとガーブは視線に気づいたのか、パチッと俺たちの方にウィンクをかましてきた。
……イラアッ。
さすがにこれは頭に来た。ちょっとイケメンでカッコいいからって、俺たちのこと放っておいてまで女子と戯れるのもどうかと思う。
俺はあんなナルシっぽい男に生まれなくてよかった。いくらイケメンだろうがなんだろうが、中身が良くなきゃダメなんですよ!? エエ!?
「……オイ、見たか今の? ウィンクだよ? さすがにそれはちょっとないよね?」
「ああ。シュークリームをアイツの顔面にぶちまけたい気分だ」
俺たちのヒソヒソ会話は徐々に愚痴へと変貌していった。
やっぱりイケメンはどこかに闇が存在するらしい。三次元にいる限り、心も顔もイケメンな男と出会うなんてことは珍しいだろう。
……なんかアイツに悪戯したい。
俺はそう思い始めていた。ドッキリはやらないと決めたが、ここでまた再開するのもいいかもしれない。
「なあ、ガーブの野郎になんか悪戯しねえか? このままじゃ俺の気が済まん」
「お! いいじゃねえか京夜! どんな悪戯してやっか!」
俺たちは考えこんだ。
なんかカッコ悪いポーズさせる悪戯みたいなのがいいんだよなあ……
そんなことを考えていると、ふと俺の頭に、名案が浮かんだ。
「よし、これならどうだ? まず、バナナをそこの八百屋で買い、皮だけ取っておく。そしてその皮に俺の『プチ・サンダー』を加え、静電気を発生させる」
「おおっ! いいじゃねえか! じゃあさらに、木や岩なんかを利用してガーブを転ばせるってのはどうだ? 俺の必殺技なら、木や岩ぐらい簡単に切れるぜ?」
「お! いいねいいね! 盛り上がってきたああ!!」
技術の無駄遣いとはまさにこのことをいうのだろう。
俺は舌の痛みも忘れ、キャッキャとはしゃぎまわっていた。
そんな俺たちを怪訝そうな顔でガーブが見ていたが、今からそのツラを恥に変えてやれると思うと余計にテンションも上がる。
「いやあ、最高の気分ですねティールさん!」
「全くだ!」
俺たちはウキウキ気分で、八百屋へとバナナを買いに行った。
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