アルゼ村、到着
ガーブとピューラが乗っていた馬車の中。
俺たちはその中で、キャッキャウフフと楽しい時を過ごしていた。
ちなみにティールは……うん。
アイツのことだから、元気にやれているハズだ。たぶんだけど。
「えー!? ガーブさんって、木の魔法使いなんですかー!? すごーい!?」
「いや全然、僕なんかまだまだだよ。ライアちゃんは剣士なんだろ? すごいね」
「いえいえ、私なんか~」
……そしてガーブが何気に女子組たちと仲良くやっているのが腹立つ。
そしてすごいクセに「僕なんかまだまだ~」とか謙遜しているのもムカつく。 さっき助けてもらっといてなんだが、ちょっとコイツは苦手だ。
「ピューラさんは弓使いなの!? すごーい! 難しそうなのに!」
「ああ、私も見習わなければ」
「いえいえ私なんか~」
俺、孤立。
助けてティール。お前の馬車でいいから移動させてくれ。
なんかコレは別の意味で辛いんだよ。
俺はぼーっと窓の風景を眺めた。
舌痛いから喋ろうにも上手く喋れないし、会話にイマイチついていけない。
そんなことを考えていると、ふとパタパタとピピがやってきたのが分かった。
「お前のせいで上手く喋れないんだからな……? 痛ってえ……」
いや、俺が舌を噛んだせいでもあるから、自業自得なんだけど。
ああ、コイツめ――――――
「キョーヤ! テンサイ! カッコイイ!」
お、おおっ!?
「ピピ! お前もやっと俺の魅力に気付いたか! お前もなかなかカッコいいぜ?」
「キョーヤ! イケテル! イケメン!」
「おお、ありがとう! さっきは猫かぶりとか言ってごめんな! お前、最高だよ!」
そう言って俺はピピの頭を撫でた。
ああもう、マジでさっきはあんな悪口言ってごめんな。今の俺にとってはホント励まされるよ。
再び窓を見ると、ティールが馬車相手に苦戦しているのが見えた。今更だが、優秀とか言ってたのは一体なんだったんだろうか。
「お、そろそろ着いたみたいだね。降りようか」
ガーブのその声と同時に、ピタッと馬車は止まった。
こうやってベストタイミングで止まる馬も腹立つ。
「ティール、どうだった? 罰ゲームは」
ガーブの視線の先を見ると、はあはあと息を切らしながらやってくるティールの姿があった。
……やっぱりアイツなら大丈夫だ。これから先いろんなことを乗り越えていける男になるだろう。
「ふーっ、ふーっ……もうこれ罰ゲームどころじゃねえぞ!? 岩にぶつかって死ぬとこだったんだからな!? 俺!?」
「まあその時はその時でしょうがないかなーって」
「ねえ、そんな軽いノリで済ませないで!?」
息を荒くしながらも全力で突っ込むティール。
なんかガーブもドSっぽいし、俺たちのチーム以上に大変なんだろうなあ。
「あ! 見えました! あそこが魔物モンスターが出る村、アルゼ村です!」
ピューラが指さした先を見ると、緑に囲まれた村があるのが分かった。
……思ったんだけどこの辺り、森多いよね。いや、火山とか雪山とかのテンプレ過酷ダンジョンよりは全然楽なんだけどさ。
「俺のセリフ取られた……カッコよく言うつもりだったのに……」
アルゼ村の名前を叫びたかったと思われるティールをなだめながら、俺たちは村へ歩き始めた。
……なんかもう疲れた。帰りたい。




