バカインコ! HPが30減った!
「あー! いた! 二人ともー!!」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
幻聴でも聞こえたのかと思ったが、喋っている内容を聞く限り本当っぽい。
「もー、捜したんですよー? 朝早くから探しに行ったのに、見つからないから……あ! それよりも! ピピが見つかりましたよ、ホラ!」
そう言ってライアは、自分の肩を見してきた。
するとそこには、元気そうにピーピー鳴くピピの姿がある。
ああ、良かった。これで見つかってなかったらまた厄介なことになってたしなあ。
俺はもう体ボロボロだし、できれば早くどこかで休みたい。
「そりゃあ良かった……で、ピピは一体どこに行ってたんだ?」
「え? 何が? 見つかったって……」
混乱しているアークをよそに、俺はライアへと尋ねる。
「それがですね……木の枝に引っかかって身動きできなくなってたんですよ。そこを私たちが偶然見つけて、助けてあげたんです」
……このバカインコ。
だがもう、俺には怒る気力すら残っていない。ここはさっさと街に帰って、宿を見つけて――――――――
「バカキョーヤ! クソバカキョーヤ!」
…………。
……は?
このインコは今何て?
「バーカ! クソバーカキョーヤ!」
なっ……
「うるせえ! このクソインコ! 唐揚げにして食うぞ!? ああっ!? テメエこそ木に引っかかって動けなくなったクソバカインコじゃねーか! ざまあみろ!」
これにはさすがに俺もキレた。いや、キレていいはずだ。
散々昨日も今日もがんばって、日々一生懸命に生きている俺が、なぜインコからクソバカ呼ばわりされなくてはならないのだ。
絶対に俺は今怒っていい。
「クソバーカ! バーカ! クーズ!」
「テメエなあ……俺のことなんも知らねーくせに決めつけんじゃねーよ! なんなんだよ! 清楚な見た目しやがって中はドス黒ってか? モンスターにでも食われろこの猫かぶりドス黒インコ!」
「バカキョーヤ! ドスグーロ!」
「お前のことだよバカインコ!」
後ろでヒソヒソ陰口を言い合っている三人が気になる。聞こえた内容は「なんでインコと会話できるんでしょうね……あの人一体何者なんでしょうか」「きょーや大人げない……」「もはや彼は天才だ」など。
……大人げない? もうこの際関係ねえ! 俺子どもに戻るもん!
「バーカ! ニート!」
「うるせえんだよ! 焼き鳥の方がいいか!? このバカイン……ゴッ」
そこまで言って、俺の動きは停止した。
……舌噛んだ。
ヤバい、痛い。血が出てる。
「バーカ♪ バーカ♪」
「なあっ……テメひぎゃああああああああああ!!」
これホントにダメなやつだ。
痛いぃ! マジで。シャレにならない。
「ぷっ……あはははは! インコと喧嘩して舌噛むとかwwwどんだけマヌケなんですか!」
「はあ……はあ……お腹痛い……」
「ぶふっ……ふーっ、ふーっ、きょ、京夜、時にはそういうこともあるさ……プッ……」
だからフォローになってないんだって。笑って言われてもちっとも励まされないから。
ああ、もう死にたい。
なんで森に入って、体力散々使って、インコに悪口を言われなくちゃならないんだろう。
「がっ……はっ……」
喋ることができないので、俺は「街に戻るぞ」のジェスチャー。
呼吸困難になりかけていた三人だったが、なんとか了承してくれた。
「ニート♪ ニート♪」
……このインコ本当食べてやろうかな。
いや、廃品回収にでも出した方がいいだろうか。
俺はピピの悪口を聞きながら、フラフラの足を動かし始めた。




