一日、終了……?
「……もうこれでいいや」
俺は出来上がったカレーを見ながらつぶやいた。
なんかスープカレーみたいになってしまったが、まあ俺にしては上出来だろう。
「うーん……お腹すいた……あ! カレー!」
ガバッとアークは起き上がり、ふああと大きなあくびをする。
俺はアークに皿を手渡すと、明日どうするべきかを考え始めた。
「……明日の夕方までにはこのクエストを達成しなくちゃいけないらしいから、明日早く起きて二人を探しに行くしかねえ。分かったか? アーク」
「むぐむぐ……分かった! ……そういえばピピは?」
あ、そうだ。コイツには教えてないんだった。
……。
「ピピならライアが連れて行ったよ。明日頑張ってライア達も捜せばピピとも会えるハズだから」
「そうなの? よし、頑張って捜そうね!」
コイツに教えると今すぐにでも探しに行きそうだから黙っておいた。
ま、仕方ねえ。取りあえず明日になるまで体力温存しとくか。
「ふうっ。ごちそうさま! 美味しかったよ、きょーや!」
「そりゃどうも。じゃあもう今日は寝ろ。明日早いんだから」
「はーい!」
そう言っていそいそと寝袋に入るアーク。
なんかやたらテントが狭いのだが、アークに蹴られたりしないか心配だ。
いや、俺なら大丈夫か。あのコハクの猛攻撃にも耐えることができたんだから。
こんなチビッ子の繰り出すキックなんかちょろいもんよ。
「……後片付けどうやればいいんだろ」
ああ、眠い。できることなら今すぐにでも眠りたい。
確か俺のバッグに非常用の水があったっけ。あれで洗えばいいか。
つーかなんで後片付けまで俺がやることになってんだろう。いや、アークに寝ろって言ったのは俺なんだけどさ。
仕方ねえ、ここはチャチャッと終わらせて一刻も早く寝るか。
俺は眠い目をこすりながら、バッグから水を取り出した――――――
「ふああ……今何時だ……?」
俺は寝袋から身を乗り出し、大きく体を伸ばした。
昨夜、なんとかアークの猛攻撃に耐えた俺。いやあ、結構キックが強かったのでビビった。まさかチビッ子にこんな潜在能力が潜んでいたとは。
いや、15歳ならチビッ子っていう歳でもないんだけれども。
でも、アークの身長や体格を見れば、小学校高学年くらいに見えてしまってもおかしくない。
「あ、俺腕時計持ってんだった」
俺は先日、雑貨屋で腕時計を買ったのを思い出した。
いやあ、あの店には結構お世話になっている。ホントになんでも売ってるし、値段も安い。
転生してから十回以上行っているかもしれないなあ。
「えーと、今は……」
ズボンのポケットから腕時計を取りだし、光にかざしてみる。
……え。何……コレ。
「10時……30分……!?」
俺は目に移った現実を叩きつけられ、驚愕した。
それと同時に0.2秒の速さでアークを揺さぶる。
「オイ! 起きろ! 完全に寝坊した!」
「むにゃあ……牛が一匹……二匹……」
「起きろオオオオオオオオォォォォォ!!」
俺の魂の叫びによって、アークは目覚めた。
なんなんだコイツ。毎回こんな大音量で叫ばなきゃ起きないのかよ。
「ふあ……きょーや……おはよー……」
「ああ、おはよー……ってそうじゃねえ! 急いで準備しろ! 今すぐ出発するから!」
「ええ……? あさごはんは……?」
「それどころじゃねえんだよ!」
俺はバタバタと慌ただしく準備を始めながら、アークに説得する。
最悪だ。まさかこんな遅い目覚めになってしまうとは。
今すぐここを出発しないと、夕方までに間に合わない。
俺はなぜこんなことになってしまったのか、と急ぎながらも考えるのだった。




