遭難した! どうするきょーや!
「はあ……はあ……どうなってんだこの森は……」
ピピ捜索開始から約30分後。
……遭難しました。
いや、ホントに。まさかこんな大迷宮みたいな構造になっているとは思わなかった。
「うーん……あれ? きょーや……? みんなは……?」
俺が森をさまよっていると、嫌なタイミングでアークが目覚めてしまった。
「アーク。非常に切実な問題がある。……遭難した」
「……え?」
アークはポカンとした表情で俺を見つめてきた。そりゃあそうだ。目覚めの一言が「遭難した」だもんな。最悪の目覚めだろう。
しかし、コレはマジで笑い事じゃ済まない問題だ。
「いや、これマジな話な? アーク。どうすればいい?」
「ふああ……私眠いからもうちょっと寝る」
「ああっ!? おい!」
アークは再び俺の背中に顔をうずめてしまった。
そして10秒も経たない内にスウスウと寝息が聞こえてくる。
本当にすごいと思う。こんな緊急事態に眠れるなんて。
でも、これは完全に俺の責任だ。どうにかしなければ。
「やっべ……もう暗くなってきてるじゃん……コレ移動できないヤツだ」
空を見上げると、完全に太陽が隠れていた。正確な時刻は分からないが、おそらく7時近くになっているだろう。
これ以上の移動は危険だということは、俺にも分かる。
「……しゃあねえ」
俺はアークが背負っていたリュックから、テントを取り出した。うわっ、なんだコレ……猫耳? なんかよく分からんがおもちゃのようなものがめちゃくちゃ入っている。
くそっ、やたら重く感じたのはそのせいかっ……
右手にバッグ、後ろにアーク、左手でアークの足を支えていたのだ。いくら力が上がったとはいえ、さすがにコレはキツイ。
ああ、それにしてもテント準備すんのめんどくせえ。
ちなみに、ライアにもテントは一式持たせているから、取りあえず寝泊まりすることは可能だろう。
「おいアーク。起きろ」
俺はぺチぺチとアークの頬を叩いてみるものの、起きる気配はない。餅のごとく伸ばしてみたりもしたが、起きなかった。
「はあ……マジかよ……仕方ない。俺一人でやるか」
さすがにこれ以上やると頬にアザができてしまいそうなので、諦めた。
俺は用意してあった掛布団らしき物にアークを寝かせると、急いでテントの準備を始める。
てか俺またアークとペアになんのかよ。コイツ寝たら起きないからめんどくさいんだよなあ。
釘を打ち付けながら俺は、今後どうするべきかひたすら考え続けた。
「よっしゃあ……できたあ!!」
俺はばたりとその場に倒れこんだ。
いや、この作業が結構キツかった。釘を打つ体勢のまましゃがまなくてはならなかったので、足がかなり痛い。
いい汗かいたなー、と思いながらも、俺は急いで次の仕事へ移る。
「カレーってどうやって作るんだ?」
俺は用意してあった食料の説明覧を見ながら、小さくつぶやいた。
俺が持っていたバッグの中にはコンロや鍋などの道具が入っているが、俺に料理の知識はないぞ。
……あーもう分からん! こうなったら勘で作ってやる!
俺はザクザクと野菜を切りながら、アークが起きるのを待つのだった。