ダークヘラボーン二匹が現れた! コマンド?
「てやああああ! 私たちに逆らったことを、あの世で後悔するがいい!」
「はああああああ!! ちょろいわああ!」
木が生い茂る森の中、ライアとアークはダークヘラボーン二匹を相手に戦っていた。
ご希望通り、俺とコハクは遠くにある木陰で見守っている。
「……本当に助けなくていいのか? 正直言ってあの二人だとものすごく心配なのだが……」
「あ~もういいんじゃね? アイツら助けに行ったら怒りそうだし」
運が良いのか悪いのか、俺とコハクがダークヘラボーン二匹を倒した後すぐにまた二匹が加わった。
ま、アイツらだって素人ってワケじゃないんだから、そんな苦戦することもないだろう。
……「自称」伝説の魔法使いだっているワケだしな。
「死ねええええ!! ……ぐふっ」
「はあああああ!! ……ぎゃふん!」
2秒前にそう思ってしまった自分を殴りたい。
予想していなかったワケではないが、まさか本当にふっとばされるとは。
「ううっ……可愛いレディーを吹っ飛ばすなんて……人間の心を持っていないのでしょうか」
いや、もともと人間じゃねえし。
「ああ……もう私限界……ぱたっ」
「アークウゥゥゥゥゥゥ!! よくもアークをおおおおお!!」
泣き喚きながらライアはアークを揺さぶる。
……コントでもしているのだろうか。
こんな状態でできるなんて、すごいね。お笑い芸人にでもなったらどうなんだろうか。
しかしいつまでもそんな状態だったら死ぬぞ? マジで。
「コハク、この距離で弓当たりそう?」
「……たぶんできると思う。ライアに当たる危険性はあるが、まあそこは私の腕でなんとかしてみせよう」
そう言いながらコハクは、弓を前に構えた。
俺もなんかしらの手助けをするために、魔法杖を前に出す。
「『妖弓骸滅斬ッ!!』」
「『サンダー・レイン!』」
俺のカッコいいけど威力は弱い技がダークヘラボーンへと炸裂した。
それと同時に、コハクの弓矢も一直線に飛んでいく。
「ギャオオオオオオ!!!」
俺の魔法が功を奏したのか、ダークヘラボーンはあっさりと倒すことができた。
俺フツーに強いじゃん。ヤベえ、カッコいい。
「京夜さあん……私……」
うるうると瞳を輝かせるライアに、俺は不覚にもドキッとしてしまう。
俺はキツくお仕置きしてやろうと思ったが、そんな気分じゃなくなってしまった。
「ったく……次からは注意しろよ? アークも……って寝てんのか」
「京夜……自分の手柄みたいに言っているが、最終的に倒したのは私だよな……?」
小さくつぶやくコハクを無視しながら、俺はアークをおぶさった。
確かに倒したのはコハクだが、ここでコハクの手柄にしたら俺の威厳が失われる。間違いなく。
「ふう……ってアレ? ピピは?」
ライアがふとそんなことをつぶやいた。
見てみると、確かにライアの肩に乗っていたピピがいない。最近はずいぶんと懐いていたから、逃げるなんてことは無いと思うのだが。
あ、さっきまで思いっきりダークヘラボーンと戦ってたわ。……そりゃあ逃げるわな。
「うわあああああああん!! ピピィィィィ!!」
「お前、ちょっと落ち着け」
叫び声の大音量にももう慣れてしまった。
……たぶんこのまま放っておけって言っても聞かないだろうしなあ。いくら森の中とはいえ、泣き叫び続けるのは勘弁してほしい。
「ちっ……仕方ねえ、捜しに行くか。お前、どうせ捜しに行くつもりなんだろ?」
俺がアークに訊くと、コクンとライアは小さく頷いた。
……しかし、まいったな。当然だが、この森は街中にある木の量とはくらべものにならないし、奥に進むにつれ暗くなっていってるので危険だ。
しかも俺は動物が嫌いな男。モンスターは別だが、ああいう小型鳥なんかは特にダメだ。
ダークヘラボーンの数は残り一匹。明日までには全匹討伐しなくてはならないので、急いだ方がいい。
俺が進みだすより先に、ライアとコハクは猛ダッシシュで森へ突っ込んでった。
こっちはアークを背負って歩かなければならない。さっき魔法を使ったせいでもあるのか、体がだるい気がする。
……にしても気持ちよさそーに寝てんなコイツ。羨ましいわ。
俺は足に力を入れ、ゆっくりと歩き出した――――――




