魔法使い、きょーや
朝起きると、当然のごとくライアとアークは俺の布団に入っていた。これはまだいい、いいけど、コハクさんが俺の顔面を蹴ってきたんですよ。
「ぎゃぶほっ!?」
当然、俺は怒ってコハクを起こそうとした。しかし恐ろしいくらいに起きない。
それに全員浴衣がはだけていて目線をそらすのが大変だった。
まあ、前よりは眠れたけどさ。
「ふああーあ……」
俺たちはクエスト受付窓口へと向かっていた。
朝飯も食って腹いっぱいになったし、もう俺は眠くて眠くてたまらない。ニートをやっていれば当然、惰眠を貪ることもできるわけなんだが。
というか最近あまり変わったことがなくて暇だ。
いやまあ、モンスターがいるって時点で暇じゃないんだけど、なんか戦いにも慣れてきたし、そろそろなんかしらのイベントがあってもいいと思うんだよなあ。
クエスト受付窓口へと着くと、俺たちは早速クエスト依頼のボードを見始める。
「今日はどこ行きましょうかー。京夜さんのメタルソードも直ったし、多少難しいクエスト行ってもいいと思うんですが……」
「うむ、賛成だ。たまには難しいものにも慣れておかなければ」
「あ、じゃあこれなんかどう?」
そう言ってアークが手に取ったのは……
「『ダークヘラボーン五匹討伐! 最近森の中でダークヘラボーンの被害が多く困っています。非常に凶暴な個体なので、十分注意して挑むようにしてください。ダークネスボーンの弱点は角です。角がダークネスボーンの命の役割を果たしています。なお、このクエストは宿泊形式となっております。報酬金額は40万ゼニーです」……」
なんじゃそりゃ。
ダークヘラボーン? とやらは知らないが、凶暴な個体と書いてある限り一筋縄ではいかないだろう。
角が命とか、もしなんかの拍子に折れてしまったりしたらどうするんだろうか。
「なあみんな。ダークヘラボーン……とやらは知ってるか?」
「「「知らない」」」
……まあなんとなく予想はしてたけど。
でも本当にコイツらハンターなのかな。なんでこんなにモンスターに関する知識がないんだよ。
ライアとアークはともかく、コハクまでもがダークヘラボーンのことを知らないらしい。
ま、行ってみりゃあなんとかなるか。
俺はそう思いクエストカウンターのお姉さんに依頼書を渡した――――――
「速い! 速すぎるからっ!! もう俺死ぬからあああああああ!!」
森の中で俺は、ダークヘラボーン二匹に追いかけられていた。
なんとダークヘラボーンの正体は鹿であり、相当な速さで俺を追いかけてくる。
遠く離れた場所でコハクが一言。
「京夜は何か呪いでも持っているのか? ひどい襲われようだが」
「ああ、京夜さんのあれは恒例行事みたいなもんなんで気にしないでください」
「気にして!? ねえ気にして!? ひぎゃああああ追いつかれるううう!!」
大方間違っちゃいないんだけどさ、でも気にしてくれよ。
俺はとうとう距離を詰められ、ダークヘラボーンの角が俺の腹に当たりそうに―――――
「『妖弓双絶弾ッ!!』」
遠くからコハクの声が聞こえたかと思うと、二匹のうち一匹、走っていたダークヘラボーンの動きが止まった。
そうだ! こっちには弓使いがいたんだ!
俺は一匹なら相手できそうなので、残り一匹のダークヘラボーンの一撃をメタルソードの腹で受け止める。
「『プチ・サンダー!』」
俺は魔法名を唱えると同時に、メタルソードに触れた。
「『プチ・サンダー!』『プチ・サンダー!』『プチ・サンダー!』」
触れ続けると同時に、メタルソードがバチバチという音を立て電気に包まれていく。
鉄は電気を通すからなあ! はっはっは!
俺は魔法杖を前に出すと同時に、ダークネスボーンへと突っ込んでいく。
「『サンダー・レイン!』」
叫ぶと同時に、俺の杖からは電気エネルギーが放出されていく。
威力は大して高くないが、それでも相手を怯ませることはかなった。
「クギャアアアア!!」
「はああああっ!!」
俺はメタルソードでヤツの角を斬りつける。
クエスト依頼書の説明通り、角が弱点だったらしい。ダークネスボーンはその場に倒れこんだ。
「ふう……こっちも終わったぞ。なかなか凶暴で苦戦した」
見るとすがすがしい表情を見せたコハクが俺へ報告をしていた。
ああ、これで取りあえず二匹の討伐は終わった、終わったんだが……
「…………」
「…………」
ライアとアークは今まで何をしていたんだろう。
俺が見ていた限りは、ずっと遠くの木で応援している姿しか記憶にないんだが。
「……京夜さん2種類の職業を見事に使いこなしてましたね。すごいですよ」
「きょーや、私たちは二人の様子を眺めて勉強していたワケで、決してサボったとかじゃ……って痛い痛い!」
「痛いぃ! ごめんなさいい!!」
「へー、そうなんだー。俺たちの手伝いもしないでぼーっとここで待ってたんだねー。へえ~……」
俺は二人のほっぺたをひっぱりながら言い放った。
む、それにしても二人とも結構ほっぺ柔らかいな。餅みたい。
「だから私たちはサボったわけじゃないのにい……分かったよ、次は私たちが頑張るから!」
「そうですよ! 京夜さんとコハクさんは休んでていいですよ!」
二人がほっぺを引っ張られた状態で訴えてくるもんだから、思わず吹き出してしまった。
そして吹き出すと同時に引っ張っていた手を開放すると、二人は漫画みたいに地面へと落ちていく。
「あうう……よしアーク、次は私たちで狩るよ!」
「りょーかいっ。私の手にかかればダークヘラボーンなんてちょろいわあ!」
二人は自信満々の笑顔を見せた。
……これから先、非常に心配だ。
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