護るもの
フレアの言葉に顔をひきつらせた悪魔のオッサンは、俺に掴み掛ろうとしてくる。
俺はそれを躱すと、身体を捻って悪魔のオッサンの脇腹をフレアで斬りつけた。
「クッソ野郎クッソ野郎クッソ野郎……! テメエらに俺の何が解るっ……! 俺だって地獄の管理もしなきゃいけないし、守らなくちゃいけねえんだ!」
「……おや。そうでした、貴方は魔王でしたね。地獄の最高責任者の。では私が代わりにその仕事を引き受けましょう。そしたら貴方はもう思い残す事ありません」
「うるせえっ! テメエらが天界に来なきゃこうはならなかったんだよ! おい糞ガキ、テメエは前から気に食わなかったんだ! クソニートから成り上がって、平気で敵を圧倒して―――っぐっ!?」
俺は悪魔のオッサンを蹴りつける。ガインという音と共に、近くにあった建物が崩れ落ちた。
悪魔のオッサンは―――悪くはないとは思う。
でも、紛れもない、敵だ。仲間を殺そうとしているんなら、敵だ。
「何かを護る為に戦う」のは、どちらも同じ。
なら―――。
「……ああっ、そうだっ……! そうだよ……! 全部、アンタの言う通りだよっ……!」
俺は、天に浮いた状態のまま悪魔のオッサンを睨み付ける。
「そうだよ……俺は異世界に行く前は、紛れもない糞人間だったよ! でも、変われたんだ! 今までっ……今までいたのかよ!? 自分の仲間を護りたくて、次元ぶち抜いてまで闘ってきた人間が!!」
「ッ……!」
「俺が成長したのは、仲間のおかげなんだ! アンタこそっ……俺の事を何も解ってねえだろ!」
悪魔のオッサンは、立ち上がった。ボロボロの身体を引きずりながら。
「……俺だって……護んなきゃいけねえもんがある。……糞ガキ」
「……そうかよ」
俺達は無言で睨み合う。
「主。壊れても構いません。貴方の全力で大丈夫です」
フレアが俺に言う。その言葉に俺は頷くと、フレアの剣先を悪魔のオッサンに向けた。
これで―――最後、か。
「うらああああああああああああああああああっ!!!」
「ああああああああああああああああああああっ!!!」
俺は悪魔のオッサンの胴体を切り裂いた。
致命傷を与える事ができたのか、ドサリという音が背後から聞こえる。
―――が。
「ッ……!?」
突如、腹部と右腕に激しい痛みが走る。
見ると、右腕はどこかへ吹き飛び、腹部は貫通された状態になって、悪魔のオッサンの巨大な爪が刺さっていた。
崩れ落ちる俺の身体。そのまま俺は吐血する。
「クッ……ソッ……!」
喋れない。動けない。
―――どうしろって、言うんだよ。
「俺が……僕が……助けないと……いけないのに……」




