【使者】
俺は宙に浮いた状態のまま、悪魔のオッサンに向けて魔法を放つ。
「『ダーク・バースト』!」
悪魔のオッサンはそれを片手で弾き飛ばす。そうなるのは大体予想がついていた。
だが―――ここからである。
俺は全身の筋力を駆使して、悪魔のオッサンの周りをグルグルと走り回った。
生物誰しも、一定の動きに慣れてしまえば、油断しやすくなるという。
俺は「一定の動き」を意識して走り回る。悪魔のオッサンも、少しずつその動きに慣れてきている様だ。
よし、今だ――――!
そう思って、俺は宙から急降下し悪魔のオッサンの首筋を狙ったが。
「どこ狙ってんだ?」
「……!? が、ぺっ……」
勝負は一瞬でついてしまった。
……俺が、首筋を爪で斬られるという形で。
「ッ……! 『ダーク』!」
「『ネメシス』」
「……!!」
俺の腹部が闇の力によって切り裂かれる。
防御しようがないのだ。……魔法の力で、切り裂かれているから。
だが、幸い痛みには疎くなっている。
このくらい、回復魔法を使えば何ともない。
そう、思ったのだが。
「……治れっ……! 闘わないと闘わないと闘わないとっ……!『ライフ・エナ』」
「おーっと残念!」
―――一瞬で俺の身体はバラバラにされた。
「……へ」
その後はもう、感覚が消え去っていって、
「『ダーク・バースト』」
「がががががががががが」
脳が焼けるような激しい痛みがして、
「『ダーク・オブ・カースト』」
「あああああああああああああっ!!」
自分が何なのか解らなくなるくらい、大声を上げて泣き出しました。
……皆、無事でいてくれてるかなあ。
そうだよね。俺なんか、居なくても。
……俺なんか居なくたって、あのゲームの様な世界に何か影響がある訳でもないし。
皆元気でいてください。それではさようなら。
遺言は、これでいいか。
…………疲れたなあ…………
「……頑張ったよね、俺」
最強の悪魔相手に、十分渡り合えたのではないだろうか。
『……さあ、どうなんでしょうね』




