きょーやvsライア&アーク&コハク!
俺は今、透明マ✕トをかぶりながら、女湯へと潜入していた。
今の時刻は6時過ぎ。普通は風呂に入ってからメシを食うのが一般的だが、この旅館ではメシを食ってから入るのが一般的らしい。
しかし俺たちは疲れているので、先に風呂に入ることにした。
こちら側としても好都合だ。他に入ってくる人間がいないということは、邪魔も入らない。
俺は先回りをして、ついに風呂へと到着した。
「ホアタアアアアアアアアアアアア!!!」
俺は指先をお湯に連打しながら、魔法を唱え続ける。
「『プチ・サンダー!』、『プチ・サンダー!』、『プチ・サンダー!』。『プチ……』」
よし、俺の今の体力なら耐えられる。多少の倦怠感はあるものの、これならすぐに電気風呂を作れそうだ。
「いやー、今日も疲れましたねー。もう体バッキバキですよ~」
「ホント、今日は面白かったね! 京夜のドッキリが……ぷぷっ」
「ああ。いい映像が見られたな」
脱衣所の方からライアたちが話しているのが聞こえる。
ふふふ、今から君たちには俺の仕返しを受けてもらうよ? 俺をからかいすぎた罰だ。
よし、電気風呂完成! いってえ、結構コレは刺激が強いぞ。
ガラッという音と共に、ライアたちが風呂へとやってきた。
くそっ、湯気でよく見えねえ! せっかくドッキリのついでに入浴姿を観賞しようと思ったのに。
ライアたちは体を洗い終わると、すぐにこちらへとやってきた。
まあいい、今その身に電気風呂を食らうがいい!
「はー……疲れたあ……っていったあ!? ビリビリするよう……!」
「え? 何言って……ってホントだ!? いたい、痛い痛い!」
「あ……これはなかなかに刺激がっ……痛いぃぃぃぃぃぃ!!」
ふっふっふ、どうやら苦戦しているようだな。
だが俺が仕掛けるドッキリはまだまだこんなもんじゃない。俺は第二のドッキリへと移る。
「きゃあああああ!! 冷たっ!? 冷たい死んじゃうよおおおお!!」
「ひぎゃあああああああ!!」
「ああああああああああああ!!!」
はっはっは。なんて愉快なんだ。
俺は見えていないのをいいことに、アイツらに冷水を思いっきりぶちまけてやったのだ。
だが残念。まだ終わらないぞ。
「きゃああああああああああああああ!!??」
「にゃああああああああああああああ!!??」
「ぴゃああああああああああああああ!!??」
叫びが見事にハモッたな。よろしい。
俺は先ほどライアが使っていたゴリラマスクを装着し、もう一つ新たに覚えた魔法・『サンダー・レイン』をアイツらに向けて撃ち放った。
魔法と言えば危険だと思われるかもしれないが、この魔法による電撃はかなり弱い。静電気が体中に行きわたる程度のものだ。
三人は風呂から逃げ出し、脱衣所へ駆け込んだ。ちょうどその瞬間湯気がどいたので、鼻からケチャップが出そうになる。あぶねえ、トマト風呂に染まるとこだった。
……ちょっとやりすぎたかな。
まあいいや。めちゃくちゃスッキリしたし。
俺は透明マ✕トを体にかけなおしながら、男湯へと向かった。
「いや、絶対あれは女湯を除きに来た変態ですって! 二人もそう思いますよね?」
「うん、絶対変態の仕業だよ!」
「あれをやったヤツは真正の変態だな」
「…………」
俺は誰もいない食堂で魚をつつきながら、固まった。
まさかこんなに変態呼ばわりされるとは思っていなかった。
いやまあ、俺がやりすぎたのが悪いのかもしれないけどさ? でもさあ、変態はやめようよ。俺だって悪気があったワケじゃないんだよ。
……いや、ドッキリの80%は完全に調子こいてたけど。
でも変態はさすがの俺も傷つく。
「いや、変態はやめてあげようぜお前ら。確かに悪意があったのかもしれんが、やった人だってきっと何か理由があ……」
「いーや、あれは絶対に変態だ! 電気風呂で私たちをビリビリにして、冷水かけてきて、しまいにはゴリラのマスクつけて電気魔法撃ってきたんだよ!? どう考えても変態だよ!」
「そういえばあのマスクって私が買ったゴリラマスクと同じでしたよね」
「ああ。脱衣所から盗んだのかもしれない」
……。
コハクの考えた推理は的中している。
俺は確かにライアの脱衣カゴから、ゴリラマスクを盗って風呂の岩場に隠れた。
すげえよ、すげえっす。俺の完璧だと思っていた計画が、こうも簡単に推理されるとは。
もう絶対にドッキリはしない。
俺はそう心に決めるのだった。




