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作戦(レイン視点)

「……ッ!! 避けろ、汝らっ!」

「ッ……」

 レーディルさんの必死の声と共に、私達は身体をかがめる。

 するとその直後、何かがぶつかった様な、激しい轟音が聞こえてきた。

 振り返ると、近くにあった建物の塀が貫かれていた。多少脆弱な構造になりかけていたとはいえ、今の攻撃を食らっていたら、タダじゃすまなかっただろう。

 

「……貴様ら、行かせんぞ」

 低い声と共に、颯爽と現れる天使達。そのリーダーらしき人物が、こちらの行く手を塞ぐように立っていた。

 その天使達の予想外の数に、私は思わず後ずさる。


「……佐々木の元へ向かおうとしているのだろう? 無駄だ。貴様らの今の戦力じゃな。……今なら、まだ見逃してやってもいい。ここを去れ」

「嫌です。『グラビティ』」

「!?」


 シオンちゃんの一言で、天使達が地に崩れ落ちた。

 ゴツッという、鈍い音も聞こえてくる。恐らく、何人かが地面に頭を強打したのだろう。

 

「こ……この、小娘がッ……!」

「私をバカにしないでください。京夜お兄ちゃんと一緒に、グラビティの練習だって積んできたのですよ?」

「……舐めるなっ!!」

 天使達は苦痛に顔をしかめながらも、立ち上がり、こちらを睨み付けてくる。


「もう一度言う。ここを去れ。さもなくば……」


 リーダーらしき人物は、腰の剣を引き抜き、こちらにそれを向けてきた。

 恐らく、本気で私達を殺すつもりなのだろう。

 でも――――


「なんで、ですか」


 私は一歩前に出て、天使達に言う。


「貴様は……確かレインとか言ったな。何故貴様がここにいる?」

「何故って、言わなくても分かりますよね? 京夜さんが殺されたらどうするんですか」

「どうもしない。殺して終わるだけだ」

「……じゃあ、京夜さんがやっていた仕事はどうなるんですか。……朝ごはんは誰が作るんですか? 掃除は誰がするんですか? お風呂は誰が湧かすんですか?」


 自分で言っておいてだけど、偉そうに言える事じゃないなと思う。

 思えば、全部京夜さんに任してしまっていた。家の仕事も、外でも――――。


 ひょっとしたら京夜さんは、私達の「お兄ちゃん」みたいな存在になっていたのかもしれない。

 それこそ、シオンちゃんの「京夜お兄ちゃん」というあだ名が当てはまってしまう気がする。


「……もういい。貴様ら、死ぬがいい」

 リーダーらしき男は、こちらに向かって走り出してきた。

 それに続いて、後の天使達も襲い掛かってくる。


「『バインド・フィールド』!」

 私は咄嗟に木の魔法を唱えた。

 鋭利な剣士たちの剣は、私の魔法によってツタで絡み取られていく。

 よし、これでしばらくは攻撃不可能なハズ―――。

 だったが。


「そんな初級者向けの魔法が通用すると思うな。『バインドリフレッシュ』!」

 簡単に解除されてしまった。

 あまりの一瞬の出来事に、私は驚愕する。

「『サンダー・ブラスト』!」

「『ウォーター・フリーズ』!」

「『ダーク・フォース』!」

 天使達の魔法が、次々とは私達に向けて放たれていった。

 数的にはあっちの方が圧倒的に有利だ。一々一人ずつ倒していったら、きっとスタミナ切れで負けてしまう。


「汝ら! 足を狙え! 『ダーク・オブ・バインドルータ』ッ!」

 その叫びで、天使達が次々と行動不能になっていくのが分かった。

 でも、足を狙っても、また解除されてしまうのでは―――?

 と、そこで私は閃いた。

 だったら、魔法の詠唱を不可能にさせてしまえばいい。


「アルゼルトさん! シオンちゃん! グラビティで少しでも時間稼ぎをすることは可能ですか!?」

「え? 多分大丈夫だけど……」

「じゃあ今すぐ天使達を行動不能に! ライアさん、アークさん! 私の合図で、足を攻撃してください! ライアさんは、炎で火傷を負わせることも可能ですよね?」

「は、はい!」

「アークさん、まだ魔法は撃てそうですか?」

「多分、あと一発ぐらいは、大技かませると思うけど……」

「じゃあそれでお願いします! コハクさんは、遠距離からの支援をお願いします! もしもの時の為に、睡眠弾も用意してくれると助かるのですが……」

「了解した。すぐに用意しておこう」

「ありがとうございます!」


 こうなったら一か八か、皆さんを信じるしかない。

 作戦の旨は伝えてないか、きっとうまくいくハズ。なぜか、私の心がそう言っていた。

 グラビティを発動させているアルゼルトさんとシオンちゃんの方を確認すると。


「す、すみません、魔力がそんなにもたなさそうなので、早めにお願いします!」

「私もそんなに長くは持たないかも……」

「了解です。それじゃあライアさん、アークさん! お願いします!」

 私の合図とともに、ライアさんが天使達の元へと走っていく。

 

「『ウォーターデッド・ファイナルフリーズ・エンド』!」

「……っぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」


 足全体を凍結された天使達は、悲鳴を上げながらその場でビクンと震えた。


「まだですよ! ファイアファイアファイアファイア―――――――ッ!!」

「あああああああああああああああああああああああああ!!」


 さらに凍結しきれていなかったふくらはぎ辺りの部分を、ライアさんが一気に斬りつけて行く。

 天使達なおも悲鳴を上げ続け、ジタバタともがいている。

 私はコハクさんの方を確認しながら、「まだです」の合図をした。

 今睡眠弾を撃っても、恐らく躱されてしまう。


「くっ……! バインド解除をっ……!」

「させるか天使共が! 『リミッター』!」

「……!?」

 

 確か、今のレーディルさんの魔法は、一時的に声が発せられなくなる魔法だ。

 私はその隙を逃さずに、渾身の魔力を込めて魔法を放つ。


「『ウインド・ブレーカー』!」

 私はツタで、天使達の口の部分を拘束させた。

 これでしばらくは魔法の詠唱を行う事は不可能だろう。

 私はとどめに天使達の足の部分をツタでしっかり地面にしばりつける。そして、コハクさんにOKの合図をした。


「『睡眠弾・連』」


 大量の矢が、天使達の身体に突き刺さっていった。

 そして聞こえてくる寝息やいびき。どうやら、なんとか勝利する事ができたらしい。

 

 ……なんだか、少し上手くいき過ぎているような気がする。

 まるで、この後何か良くない事が起きるような……。

 ここまで大したケガもなく圧勝できたが、この後強敵が現れたらそろそろ本当に魔力が持たない。

 お願い、来ないで……!


 しかしそんな私の願いは、叶わなかった。


「……汝ら、まずいぞ。……とてつもない魔力を持った輩の気配が感じられる。ここを今すぐ去るぞ」





 

 


 



申し訳ございません、「シオンさん」ではなく「シオンちゃん」だったと思います。修正いたしました。

しばらく忙しくて書けていなかったので、僕も忘れている部分があるかもしれません。

「シオンさん」で正解だったのなら、感想欄などで伝えてくれると助かります。

……これから時間があったら確認していきますが。

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