変化
「『エフェクト』」
俺は天使達に向けて、渾身の魔力を込めた闇の魔法を放った。
予想外の威力を誇る魔法に驚愕したのか、数人の天使達は動けずに、そのまま闇に飲まれていく。
「佐々ッ……木ィ!」
ラファエルが激昂しながら俺に迫ってくる―――が、遅い。
遅すぎる。亀か、お前は。
「『ダークネス・グラビティ』」
「ぐっ!?」
剣が俺に当たりそうになったところで、ラファエルは地に頭部を強打した。
俺はその頭に足を乗せ、ゆっくりと重力を掛けていく。
「……があああああああああああああああああ!!」
「五月蝿え。黙ってろ」
「……っく、ふ……!」
「……おいおいお前ら。助けねえのかよ。アレか? お前らは、正義のヒーローが変身してる時に攻撃してこないような、馬鹿な敵役なのか?」
俺は、固まって動けなくなっていた天使達に、そう言い放つ。
『ああああああああああああっ!!』
やがて覚悟を決めたのか、数十人の天使達が俺に剣先を向けて襲い掛かって来た。
覚悟を決めた意志だけは褒めてやるか。だが……。
「挑発されたら行く方が、もっと馬鹿ってもんだ。———遅えよ」
攻撃される前に、俺は数十人の天使達全員まとめて、回し蹴りを食らわせた。
足の爪で切り裂かれた天使達は、すぐにその場に崩れ落ちていく。
迸る鮮血が、俺の頬にかかった。
俺は構わずに、ラファエルの後頭部に再び足を乗せる。
「ひっ……! 悪かった! 悪かったから、どうか命だけは……!」
「どん」
俺は右足に力を込め、ラファエルの頭を踏み潰す。
グシャッという音と共に、ラファエルの小さな悲鳴が聞こえた気がした。
「そんなに自分中心に世界が回る訳ねぇだろ。地軸か? お前は」
俺はトドメに、ラファエルの腹を右手で貫いた。




