助け
「はあ……」
もうね、なんだろう。
なんで目覚めが、壁に張り付いた状態なんだろう。
「……」
あれだ、拷問だ、これ。
なんかコントロールできるとかどうのとか言ってたし、俺はこのまま永遠の死を繰り返すことになるんだろう。
……もう少しだけ、あのバカな仲間達と、冒険したかったなあ……。
俺は垂れてくる涙を無視しながら、顔を下に向けた。
本当に、アイツらとはこれでお別れだ。
俺は、これから死を繰り返すことになるのだから。
思えば、なんだかんだ言って俺も、アイツらのことが好きになっていたらしい。
……これで、終わりたくないなあ……。
俺がそう思いながら、天を見上げていると。
『京夜さん、聞こえますか?』
レインの声だった。
それは、脳内に響くかのように。
「……おい、幻聴だろ?」
『幻聴じゃないですよー』
「!?」
違っていたらしい。
な、何で? 何でこんなのが聞こえるんだ?
俺が戸惑いながら、涙を拭っていると。
『今ですねー、レーディルさんに力を貸してもらってるんです。レーディルさんの特殊な魔法で、代わりに私が京夜さんの脳内に。……それよりも今、大丈夫ですか? ゾンビに襲われたりしてませんか?』
「……ああ、うん。ゾンビなら、全部駆逐されちまったらしい。ゼウスの話だとな」
「そうですか……」
ツッコミどころは多々あるが、今は取りあえず気にしないでおこう。
『良かった……問題なさそうですね。私達が駆けつけたら京夜さんが倒れてるもんですから、心配したんですよ。まあ、騎士達は撤退していってくれたみたいですが……。まったくもう、無茶しないでくださいね?』
「俺が無茶したのはお前らが戦おうとしなかったからだろ」
『う……。で、でも、戦おうとしなかったのは私達だけじゃありませんし……! ……ま、まあ今はそれよりも』
そこで一旦言葉を遮り、レインは落ち着いた様子で。
『―――今から京夜さんを、私達が助けに行きます』
……はい?
「いや、無理だろ」
『行きます』
「やめとけって」
『行きます!!!』
「ッ……!?」
レインは、いつになく怒った様子だった。
俺は、若干戸惑いながら、黙り込んでしまう。
『京夜さんが……私のせいで、危ない事になってるんですよっ!? 今、天国にいるんですよね!? ゼウスに、酷い事されてるんですよね!?』
「……いや、まあ……」
『だったら……助けに行かないで、どうするんですかっ!!』
思わぬ大声に、俺は思わず肩をビクリと震わせてしまう。
いや、レインのせいだけじゃないと思うけど。
俺がそう言おうとするのを遮って、レインはなおも続ける。
『……私以外の皆さんも、ついて来てくれるそうです。今から、私が皆さんを、天界に転送しますから。京夜さんは、じっとしていてください』
「……分かった」
『絶対に、私達が助けますから』
レインは、強くそう言い残した。




