魔法習得、完了……ってアレ?
アークに噛まれたところを押さえながら、歩き続けること5分。
ライアとコハクには好きなことやってっていいよと伝えたんだが、なぜかついてきた。俺が魔法をカッコよく操る姿を見たいんだろうか。
「ではまず最初に。きょーやはどの属性の魔法を覚えたい?」
……うーん。
炎で攻めてもなんか危険な気がするし、水はアークの魔法を見ていれば大抵わかる。使いこなせない。 木はなんだろう。木で攻撃すんのかな。嫌だ、ダサそうな気がする。
となると、残るは光か闇。
天使を選ぶか、悪魔を選ぶか。
……よし、決めた。
光にしよう。
魔法まで悪魔の色にしてしまったら怖い。ドS悪魔さんじゃん。
「よし、俺は光にする。なんか強そうだ」
「えー、京夜さんが光とかwww 光、ホーリーナイt……」
「ライア、お前ちょっと黙れ」
くそっ、いいじゃねーか別に。カッコよさそうだったんだよ。
こう、雷とかどんどん落としまくったりしてさ。
「よし、それじゃあ始めよう! まあきょーやは当然初心者だから、初級の魔法から覚えてもらいます。この伝説の魔法使いアークさまにはかなわない! ふっ」
「『自称』伝説の魔法使いだがな」
「がぶっ」
ぎゃああああ!?
何!? 噛みつくの流行ってんの!?
痛い……あんっ、そこは痛いからああああああ!!
「コハク、助けて……ぴぎゃああああああ!!」
「承知した」
俺はなんとかコハクに助けを求め、アークを引きはがしてもらった。
アークはまだご機嫌ナナメの様子だったが、なんとか魔法を教えてもらう。
「よし、じゃあ実際に魔法を使えるようになろう。じゃあまずこの私がお手本を」
そう言ってアークは、杖を振り回した。
……? アークの魔法なら何度も見たことがあるんだが。
しかし次の瞬間水が俺の頭上へと降り注いで……
「ぬがああああああっ!? 目がっ!? 目がああああああ!!」
俺はお決まりのセリフをかまし、地面へと転がる。
ヤベえ、失明レベルだぞコレ。
「よし、これで魔法は覚えたハズ! 魔法を使えるようになるには、魔法使いの魔法をその身に食らってみるしかないんだ。さあ、次はこの広場十周!」
……まあ、確かにガイドブックにもそんなこと書いて気がするけど。
でも、広場十周は絶対に必要ない。
「広場十周は必要ねえ。俺の体力舐めんなよ?」
「いや、これも最低限しなければいけないこと! さあ、行ってこーい!!」
アークに無理やり背中を押され、俺はその場を後にする。
意味分かんない。最低限必要……だと?
俺はガイドブックをパラパラとめくりながら、走り続けた。
アークたち三人が爆笑していることも知らずに。
「はあ……はあ……終わったあ……」
俺は十周走り終えると、ふさふさの地面へと転がり込んだ。
ああ、気持ちいい。広場なだけあって、地面全体が芝生でできている。
「お前ら……これでいいんだよな……?」
俺は死にかけのミイラのごとくうめき声を上げながら訴えた。
すると。
アークたちは二ヤつきながら。
「ドッキリ大成功——————!!」
…………。
……は?
「ふっ……一度にあらず二度までも騙せられるとはな。正直驚いた」
「ええ。こんなにも上手くいくとは思いませんでしたよ~」
「私をからかった罰は重いのだ! えっへん」
……。
あ、分かった。
どうやら俺はまたもハメられたらしい。広場十周なんて、最初から必要なかったのだ。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
俺は大声で叫んだ。
……今度からは絶対アーク様いじめません。
そう俺は決意するのだった。




