理不尽な世界
「きょーや~。一億ゼニー届いてるよ~?」
朝飯が鳥のエサボコボコ事件から、数時間程経った頃。
アークが、何やらデカい袋を持って、パタパタとこちらに駆け寄って来た。
「……うおっ、ホントだ。やっぱ見るとスゲエ大金だな……。まあどうせ借金のお支払いに使われるんだけど」
「すみません」
俺がチラリとシオンの方を見ると、シオンは申し訳なさそうに頭を下げてきた。
引き籠り生活は当分お預けということだな。無念。
……と、俺が一億ゼニーの入った袋を見ていると、ふと、一億ゼニーの中に紙切れが混じっているのに気が付いた。
俺がその紙切れを手にして、書いてある内容を読んでみると。
「なになに……。『京夜! 一億ゼニーと一緒に、同封させてもらったぜ! ガルド、アース、レイトだ! 前にキュウビ捜しに行ったじゃん? あの子メチャクチャ可愛かったじゃん? 萌えたじゃん? 今度はさ、大地に現れると言われている天使フレイヤに会いに行こうかと思うんだg』」
そこまで言って、俺は読むのをやめた。
何故なら、なんか皆の俺に対する視線が冷たくなっている気がするから。
……うん、いつか借金の件が落ち着いたら、必ずその天使フレイヤとやらを探しに行こうな。
「……あれ、もう一枚入ってる。コトネからだ。なになに……『皆さん、アールドハンクでの活躍、素晴らしかったですよ! もう貴方達のおかげでどれだけ村が救われたことか……! 今度、お礼を改めてさせていただきますね! ……あ、それと京夜さん。最近貴方の変な噂が流れてるんですが……? ロリロリしい女の子と一緒に笑い合っていた、とか。女性と一緒にお風呂に入っていた、とか。宿の女湯に入って、下着を盗もうとしていた、とか』……っていくらなんでもそこまでしてねえよ!? 濡れ衣だ!! てかなんで!? 女性と一緒にお風呂に入ったとかの情報どこから手に入れやがったあああああああああ!?」
もうね、視線が痛くて痛くて。
ホント、女性と混浴していました情報はどっから手に入れやがった。まさかストーカーか? いや、でもアルゼ村とアールドハンクの村からは大分距離があると思うんだが……?
……まあ、もういいや。もうこのぐらい慣れっこだ。
伊達にこの理不尽な世界で半年以上生きているワケじゃない。このぐらいなんともないさ。
俺は明鏡止水のごとく心で、そっと手紙をテーブルの上に置いた。
とにかく疲れた。昨日の疲れがまだ残っているのか、非常に身体が怠い。
俺はソファーにドサリと横たわると、そっと目を閉じようとしたが――――
「京夜! 久しぶりじゃねえか! このティール様達が来てやったぜってあああああああああ!?」
俺は勢いよく開かれた玄関を勢いよく閉めると、再びソファーに横たわる。
……ホラね? 理不尽な世界でしょ?




