魔法習得!って痛い痛い!
「え? 魔法?」
俺がアークたちの元へ戻ると、周りがやけにざわついているのが分かった。
なんでも有名な芸をするハンターがこの街に来たんだとか。
俺は全く興味がないので三人は置いていき、ティールと飯屋で喋っていたのだ。もちろん、アイツも芸なんかには興味がない。
というか芸って、一体なんなんだろう。芸? ゲイ……いや、違うか。
まあ取りあえず俺が今訊きたいのは、そんな事じゃない。
「ああ、さっきティールと話してな。お前一応魔法使いだろ? 俺に魔法教えてくれない?」
「別にいいけど、ちょっと待って……あ、次の芸始まった!」
そう言ってアークは前へと視線を移してしまった。ライアとコハクもワクワクしながら前へと視線を移す。
一体何がそんなに面白いのだろうかと思い、前を見てみると――――――
「う、うおお!? すっげえ!! どうやってんのアレ!?」
台の上に乗った一人の男性が、火のついた棒を振り回しながら呪文を唱えている。
すごいのは一瞬で、その火のついた棒を氷の棒に変えてしまっていたことだった。
「あの人は全属性の魔法使いで、たくさん魔法が使えるんですよ。世界で一番すごい魔法使いって噂されてるくらいなんです!」
ライアが興奮しながら、俺に説明してくる。
おおっ!? すっげえ、今度は木の枝に変えちゃったよ。
芸って魔法の芸のことだったのか。ティールも連れてくればよかったな。
全ての魔法芸が披露し終わると、街の人たちからは歓声が上がった。俺も思わず拍手をしてしまう。
……すっげえ。魔法ってあんなこともできるのかよ。
「いやー、面白かった! で、きょーやは魔法を覚えたいんだよな? よし、この天才魔法使いの私が教えてあげよう!」
アークの言葉で俺はハッと我に返る。
ついつい魔法芸に見入ってしまっていて、本来の目的を忘れていた。
できればアークには教えてもらいたくなかったのだが、この際仕方がない。
え? なぜかって? そりゃあまあ、いままでカッコよく魔法を駆使しているところを見たことがないからだ。
俺はぐーっと体を伸ばしながら答える。
「ああ、まあな。でも俺はまだ初心者だし、レベルが低い方が簡単にできると思うんだが……」
なんだろう。さっきの芸がすごすぎたせいでやる気が起きねえ。
というかなんだよ全属性持ってるって。チートなみに強いじゃん。
「京夜、いきなりネガティブ思考は良くないぞ。まあ確かに京夜なら簡単な方がいいと思うが」
コハクが慰めてくる。おそらくフォローしたいんだろうけどフォローになってないよ。励ましたいのか落ち込ませたいのか。
「ああ、取りあえず簡単なのから始めるか……って痛い痛い! ピピ、てめええっ!」
俺の頭をペットのインコ――――――ピピがつついてくる。
飼うと決めたあの日から、このインコはずいぶん懐いているように思える。俺以外はな。
名前を決める際は非常に大変だった。
俺たちの名前の意見をまとめてみよう。
ライアの意見は「聖龍バード・フレア」。まあこれは当然のごとく却下した。そもそも龍じゃねえし。
続いてアークの意見が「チキンハンバーガー」。もはやこれは論外。どうやら食べることしか頭にないらしい。まさか飼いたいと言っていたのは食うためだったのだろうか。
最後にコハクの意見は、「ふさふさボンバー」。おかしいだろ。
インコがかわいそうすぎる。生まれてから親に「ふさふさボンバー」なんて名前つけられてみろ。泣くからマジで。
そんな壊滅的な名前しか出てこないもんだから、仕方なく俺が「ピピ」と名付けたのである。ネーミングセンスのない俺でも、このくらいの名前ならすぐに思いついた。
まともな名前を付けてやったというのに、どうして俺には懐いてくれないんだろうか。
「はあ……意味分かんねえ……まあ取りあえず、練習できる場所に移動するか」
魔法を練習できる場所なら心当たりがある。ティールと一緒に回復技を練習した、あの広場だ。
実際、回復魔法にはかなりお世話になっている。狩りに行くときにはかなり使用頻度も高い。回復魔法だけはスキルポイントで使えるし、スキルポイントもドリンク飲めばすぐ回復できるしな。
「きょーや。言っておくが、私は相当強い魔法使いなんだぞ? ヘンテコ魔法使いじゃないからな?」
「へー、そうですかそうですか」
「むがーっ!! 教えてもらえるだけありがたいと思えーっ!!」
そう言ってアークはの首に噛みついてきた。装備が付いてないところを正確に……痛い痛い!
ああ、もう帰りたい。ニートに。
アークちゃんに噛まれたい。……あ、違いますよ? 僕はどっかの主人公みたくドⅯじゃないので。
引き続きよろしくお願いします!




