表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、異世界で悪魔になりました! ~あくおれっ!~  作者: 紅羽ユウ
グラビティ強化と依代探し!
256/299

告白

 レインに連れられ、近くの建物へとやって来た俺は。

 ここがどこなのかという疑問はさておき、取りあえずなんの要件なのかを訊いてみることにした。

「なあ、話ってなんだよ。俺にカウンセラーの先生をやれってか?」

「……まあ、取りあえず今はそれでいてください。……京夜さんは――――神王ゼウスを知ってますよね?」

「ああ、あのムサいオッサンか。アイツがどうかしたのか?」

「……ええ。あの人が最近、私を殺そうとしてるみたいで……。天使達を集めて、私を探し回ってるみたいなんです」

「よし分かった。あのオッサンぶん殴りに行っていいか?」

「ちょ、ちょっと待ってください! 取りあえず話を聞いてください!」

 ゼウスを探しに走り出そうとした俺をレインは止めると、俯きながら。


「その……。私、前にゼウスさんのお尻を叩いちゃったって言いましたよね? あれ以来、やっぱり私の事を嫌っているみたいで。それで、私を、殺そうと……。天使は殺されたら、完全に消えてなくなってしまうので、生き返るなんてことは不可能なんです」

「……そうか。でも、取りあえず地上にいれば大丈夫なんじゃないのか?」

「いえ。……きっと、私を追って地上まで降りてくると思います。そしたら、世界が危ないんです……。私のせいで、世界が壊されちゃうかもしれなくって……! そう考えると、私怖くてっ……!」

 そう言ってレインは、ボロボロと泣き始めてしまった。

 え、ええ? な、何なのコレ。随分と唐突である。

 ……ああ、でも。そういえばいつかレーディルが言ってたな。レインは繊細なところがあるから、大事にしてやってくれって。

 ……コイツもコイツなりに色々考えてたのかもしれない。知らなかった。

 ゼウスとやら、天使とやらは知らないが―――――でも。

 レインは、殺させない。世界も、壊させない。

 俺は、泣きながら俺の胸元に顔をうずめてくるレインの頭を撫でながら。


「大丈夫だよ。そこらへんの話はよく分かんねえけど、世界が壊れるかもしれないってんだろ? もしゼウスが怒ったりして暴れまわったら、世界が壊れかねないんだろ?」

 俺の言葉に、レインは小さく頷いた。

 大体言いたいことは分かった。憤慨したゼウスが暴れまわったりしたら、世界が壊れるかもしれない、と。

 そしてもし世界が壊れてしまったら、自分のせいだと。

 ……もしかして、前からこれを話したがっていたのだろうか。

 ――――全然気付いてやれてなかった。バカだなあ、俺。

 なんで、もっと早く気付いてやれなかった? コイツなりに、色々考えてることがあったんだろ?

 表情や態度なんかの変化で、気付けたことなのかもしれない。

 ……でも、ケツ叩かれたぐらいで怒って世界を壊す神様なんて、いくら何でもいないと思うんだけどなあ。

 まあ、あのロクでもないクズ神じゃやりかねないが。

 俺は未だ泣いているレインを慰めながら。


「大丈夫だって。お前、俺にその事話してくれたってことは、それなりに俺のこと信用してくれてんだろ? ……だったら、俺もお前になんか一つ、秘密でも言ってやるよ。……俺さ、身体が悪魔だって言ったじゃん? あの能力って解除するのに、『痛み』を感じなきゃ戻ってくれねえんだよ。だから例えば、自分で自分の顔面殴ったりでもしない限り、戻ってくれない。まあいわゆる、ドⅯ仕様なんだ。……どう? ビックリしたろ?」

 俺がずっと秘密にしていたことを話すと、レインはプッと吹き出して。


「あっははははは!! なんですかその変な能力! もしかして、クエストで悪魔化なんかした時も、ずっと自分で自分を殴ってたんですか!? 悪魔化解除させるために!?」

「ああ、そうだよ。あれマジ辛いぜ? 何か大切なものを失っちまう気がするしよ」

「あはははははは!!」

 レインはよほどおかしかったのか、腹を抱えて笑い出した。

 まあ、何はともあれ―――――元気になって良かった。

 俺が安心していると、レインは俺に向かって微笑みながら。


「京夜さんは、強いですよね。あんな魔力吸収機呼ばわりなんかされて、酷い扱い受けても、もう立ち直ってますし。凄いですよ、京夜さん」

「そんななあ、いつまでもネチネチ過去の事気にしてたら、前に進めねーぜ? 別に気にしなくていいんだよ。それに俺、寝て朝起きたら、昨日の記憶がぶっ飛んでる人間だし。お前に言われて、今思い出したわ」

「凄いです……。もうなんか、京夜さん見てたら考えるのがバカらしくなってきました……」


 そう言うとレインは、笑いながら俺に抱き着いてきた。

 ……いや、え?

「いや、レイン? 近いし、取りあえず離れようぜ? 大体こういうのはな、好きになった奴だけにやるもんだぞ? そんななあ、誰にでもホイホイ抱き着いちゃダメだ」

「え? だって……」

 俺がラブコメチックな状況に混乱していると、レインは小首を傾げ。


「私、京夜さんの事好きですよ?」


 …………。

 ……いや、え!?

 いや待て待て待て待て、いや、え!?

 どうした! どうした今日の俺! 

 やっぱり俺はモテ期に突入していたのか! そうかそうか! いや、ええ!?

 マ、マジか! マジかよ!

 レインは俺の混乱をよそに、なおも続ける。


「私、京夜さんに会えて変われたんです。なんか京夜さん見てると、自然に自分の明るさを保てる様になって。—―――京夜さんは、天使の心の、悪魔ですよ」

「それ、褒めてるよね!?」

「褒めてますよ?」

 全くセギアと同じことを言ってくるレインに、俺は焦りながら訴える。

 するとレインは、おかしそうにクスクス笑い。


「やっぱり、京夜さんといると楽しいです。—―――これからも、よろしくお願いしますね」

「ああ。こちらこそ」


 俺たちはそう言って笑い合った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ