依代探し
「……ひとまずここは撤退だな。あの数じゃ流石に我も相手しきれんし、死んでも蘇ってくるというのなら埒が明かん」
レーディルはサッと身をかわしながら、俺に向かってそう言った。
「でもアイツら追ってくるんじゃないのか!? コロスとか言ってたし!」
「大丈夫だ。『ダーク・レインド』」
レーディルがそう唱えると、突如地面から闇の魔法陣が現れた。
「レイン、早く入れ! 逃げるぞ!」
「は、はわわわ……」
慌てふためくレインを魔法陣に入れると、俺たちの体は闇に包まれた――――
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「……ふう。何とか逃げ切れたな」
……気付くと、俺たちはいつかの城の中にいた。
「ここは……前にお前が踊ってた部屋だよな? ライト・ブランの城の」
「ああ。……まあ早く、我の依代を見つけるぞ」
そう言ってレーディルは、ゴソゴソと散らかっている部屋の中を漁り始めた。
何処にあるのか覚えてないのかよ。めんどくせえ。
俺が仕方なく部屋を漁り始めると、レインがガラクタの中から何かを見つけたように。
「あー! これ、私の事が書かれた本ですよね!? 表紙に『魔法神レイン』って書いてありますし! そうですよね、そうですよね!?」
「あー、そうだね。すごいすごい」
俺は興奮しながら本を見せてくるレインに適当に返事しながら、再び散らかっている部屋の中を漁る。
……いや、散らかってるというか。
「なんかもうここ、ゴミ部屋じゃねえか。こんなん漁っててもキリねえよ。前に来た時はこんなに散らかってなかったのに、何があったんだ?」
「やったのは我じゃない。城内の天使達だ。天使達がゾンビの魂が増えたことのストレスで、我の部屋に次々とゴミを放り込んでくるのだ。迷惑だからやめてほしいのだが、何度言ってもやめてくれないのだ」
「……ゾンビが増えると、天使のストレスが溜まるのか?」
「ゾンビは蘇生モンスターだからな。闇属性でもあるし、そんなモンスターばっかで天界が埋め尽くされたら流石に天使達も嫌になってくるであろう。中には、新摩界軍の登場だとかほざいてる輩もいるがな」
「…………」
それって、完全に元凶が俺たちじゃん。
摩界軍といえば、確か天使と敵対している組織のことだったよな?
……というかゾンビって、結構強いんじゃないだろうか。死んでも死んでも蘇るって、チート並みの能力である。
ゾンビをもっと増やして、完全に天界を埋め尽くしたら、楽しいだろうなあ……。




