成り行き戦争
「ねえ、なんで森なんか入ったりしたんですか? しかも妖怪なんか連れて来て。私たち、心配してたんですけど? 探し回ったんですけど?」
「……はい。すみませんでした」
俺はライアに、地面に正座をさせられ怒られていた。
……いや、ね? なんか途中で森の道が分かんなくなっちゃって、ちょっとだけ戻るのが遅くなってしまったのである。
それで皆は心配して、探しに行ってくれていたらしい。
そして、俺は説教されていた。
本当に、心配してくれていたことはありがたい。ありがたいんだが……。
「……この娘に剣を向けるのはやめろ」
「え? なんでですか?」
俺の横に立っていたキュウビに、ライアは無言で剣を抜き、それを突き立てていた。
俺はキュウビの前に庇うように立つと、皆にゆっくりと告げる。
「皆、心配させてしまったことは謝る。……たださ、この娘を襲おうとするのは、やめてくれ」
「……きょーや。その娘には、前から討伐命令が出てたらしいんだけど?」
魔法使い用帽子を深く被りながら、アークが俺の方を凝視する。
……たとえ討伐命令が出ていたところで、それがどうした。
なんだか成り行きで、討伐するみたいな流れになってしまっているが―――――ふざけんじゃねえぞ。
「……おい、お前らも協力してくれないか?」
「「「……分かった」」」
ライア、アーク、コハク、レインの4人の前に、俺たちは立ち塞がる。
『や、やめてください皆さん。私は、討伐されますから……』
「―――――そういうワケには、いかねえんだよ」
俺はキュウビの弱々しい声に、ギリッと歯を食いしばった。
絶対に―――――この娘は、守らなくちゃいけない。
男として、プライドというものが存在するのだ。
……何故、こんな娘が、殺されなくちゃならない?
……何故、分かり合おうとしない?
「そっちがその気なら―――――私も全力で行くが?」
「ええ。ちょっと頭を冷やさせてあげた方がいいかもしれませんね」
俺たちに向かって、コハクとレインが挑発的な態度を取る。
それに続いて、ライアとアークも戦闘態勢を取った。
「……お前ら。行くぞ」
「「「……おう」」」
―――――この娘は、殺させない。
常識の無い問題児たちに、こんな可愛い娘を殺す権利があるのだろうか? 否、無い。
俺たちはゆっくりと息を吸い込むと、4人に向かって襲い掛かった―――――!!




