クエスト、完了!
「ああ……遅くなっちまったな……」
「ヤバいよきょーや……これ絶対、筋肉痛になるやつだ」
俺たちは疲れ切った体で集合場所へと向かっていた。
やはりアークが軽いとはいえ、人一人おぶさって歩くのは結構キツイ。
……にしてもなんで、オヤジの仲間は来なかったんだろう。最初にオヤジの姿を見たとき、周りには何人か仲間を連れていたハズだ。
まさか見捨てて逃げたとか。
いや、ありえなくもない。あんなオヤジと一緒にハンターの手助けをするとか、地獄絵図だから。いや、ホントに。
俺だったら入団2秒後で退団してるな。
「うう……きょーや、着いた……?」
「うーん……あ、いた! アイツらだ! おーい、インコ見つかったかー?」
俺が集合場所近くまでたどり着くと、二人の後ろ姿が見えた。
何とか声を張り上げ、叫んでみる。
しかし、一向に返事が返ってこない。
……? おかしいな……インコが見つからなかったから落ち込んでいるのだろうか。
近くに行くと、突然二人は振り向いて……
『遅かったじゃないかー!! 二人ともー!?』
「うわああああああああああああああああああ!!!???」
「ぎゃああああああああああああああああああ!!!???」
ひいいっ。
なぜ集合場所に来て早々ゴリラとライオンに挨拶されなきゃならんのだ。
……っぐ!? ヤベえ、呼吸がっ……
俺は息を整えながら、二人組を睨む。
「あっはははは!! 大成功ですねコハクさん!!」
「ああ! まさかこんなに上手くいくとは思っていなかった」
俺は二人を見て一瞬で状況を把握した。
……くっそ……コイツら。仕掛けやがったな。
まさにドッキリ大成功である。
「ちっ……やられたよ。つーかマジでやめてくれよそういうの。マジ死ぬからね? 俺?」
「その時は叫び声という名の遺言を聞いてあげましょう」
「ざけんな……ってアーク!?」
俺の後ろで丸まっていたアークは、どうやら気を失ってしまったっぽい。
あぶねえ、俺も下手したらこうなることになってた……
くっそ……絶対いつか仕返ししてやる。
「いやー、いざという時はこのマスク使えますねー。あまりの怖さにアークも失神しちゃったみたいですし」
「だな。動物に化けて危険を逃れられるというメリットもある」
「ねえ二人とも!? 冷静に解釈してるけど気ィ失ってるからね!? どうすんの!?」
俺はガクンガクンとアークを揺さぶってみるものの、起きる気配はない。
「ああ、いつものことなんで大丈夫ですよ。京夜さんは知らないかもしれませんけど、コハクはヤバいくらいの怖がりなんです。モンスターとかは大丈夫でしょうけどお化けとかは……ふふっ」
「オイ! なに最後の『ふふっ』って!?」
なんなんだコイツら。自分たちの仲間だろうが。
とはいえ、お化けに怖くなってビクビクしてるアークも少し見てみたい気がする。
……ってそうじゃねえ。
「インコは見つかったのか? 俺らはなぜか別のインコを見つけた」
「ああ、見つかったから大丈夫だ。時間が余ったから京夜が行った雑貨屋に行ったくらい。……で、さっきから大事そうに抱えているそのインコは……」
なるほど、さっきのマスクは雑貨屋で入手したのか。
俺は悔しい気分になりながらも、インコを見せながら説明する。
「いや、さっき木に止まってたの見つけてさ。アークは飼うとか言ってたが、さすがにちょっと……」
「「かわいい……」」
……。
……は?
今、コイツらは、何を言った?
「いや、京夜、この子は絶対に飼うべきだ。この素晴らしい純白な色に、透き通った青い瞳。ああ、なんて可愛らしいっ……」
「賛成です! もー、なんでこんな可愛いんでしょうねっ! キュートすぎますっ!!」
俺はどっちかと言えばインコを撫でる二人の方が可愛いと思うんだが。
いや、そうじゃなくて。
「二人とも、可愛がるのは良いが、飼うのは大変だぞ? 飼い主が現れるかもしれないし……」
「だったらそれまで私たちでお世話してあげればいいんだよ! 頑張ってお世話するから!」
そう言ってうるうると目を輝かせるライア。
これ絶対断ったら泣き喚くやつじゃん。また住民が集まってきたら面倒だ。
……しかし、マジかよ。俺、動物嫌いなんだけど。
でも俺と同じ意見のやつが一人もいない。ここで断ったらきっと「空気読めないダメ男」として認定されるだろう。
仕方ねえ。
「はあ……分かったよ。じゃあちゃんとお前らで世話してやれよ? 約束な?」
「「はーい!!」」
やはり返事はよろしい。
ちゃんと世話してくれればいいのだが。
俺は気を失ったアークを再びおぶさりながら、クエスト受付窓口へと向かうのだった。
( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)(引き続きヨロシクオネガイシマス!)