セイレー……騎士です
「うーん、剣で殺すのもアレだしなあ。……『フリーズ・ブラスト』!」
俺は取りあえず、氷水魔法でセイレーンを冷凍することにした。
これは非常に使い勝手がいい。よくお世話になっている。
が、セイレーンは余裕といった表情で。
「『バースト』!」
結界を張り、俺の氷水魔法を防いだ。
……!?
「お、おいアルゼルト! お前、一応は魔王グループの幹部なんだろ!? アイツどうにかしてくれ!」
「わ、分かったわ! 『ダーク・ロスト』!!」
「効きませんよそんなの! 『サンダー・バースト』!」
しかしまたも、セイレーンは結界を発動させそれを防ぐ。
なるほど、闇属性の攻撃だから光の結界で防いだのか。相性いいしな。
俺がちょっと感心していると、後ろにいたレインが不思議そうな表情で。
「あれ? なんか私村長さんから聞いたんですけど、この村に現れた魔王グループの幹部っていうのは、もっと何十メートルもある大きさだったそうですよ? なんか、デカい騎士みたいな感じの」
「え?」
俺はマジマジと、セイレーンの方を見た。
うん、やっぱり可愛らしい少女にしか見えない。あんなの、絶対魔王グループの幹部じゃないだろ。
あんな可愛い子と、やっぱ俺戦いたくないよ! いくら超音波発するからって、争いはよくないよ! うん!
しかしセイレーンはレインの言葉に、笑いながら。
「……いいでしょう! 私の真の姿、見せてあげます! ヒャオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
セイレーンはそう言って雄叫びを上げ――――――。
次の瞬間、俺は驚愕した。
セイレーンの身体はむくむくとスライムのようなものになり、やがて何十メートルの大きさもある、騎士の姿になったのだ。
俺の体の何十倍あるんだろう。
騎士はこちらをギロリと睨み、俺に言ってきた。
「貴様は逃がさんぞ。俺が見る限り、只者ではない雰囲気を感じるからn」
「てめええええええええええええええええええええ!! 男だったのかよ!? セイレーンは!? あの可愛らしい女の子は!? なあ、オイ!?」
「あんなの、俺の変化術に決まっているだろう。口調もそれっぽいものにしてみた」
「てめえええええええええええええ!! ぶっ殺すっっ!!」
とても裏切られたような気持になり、俺は泣きながらスパエメちゃんソードを引き抜いた。
あの子、可愛かったのに。常識のある子だと思ったのに。
……ぶっ殺す。
「なんか京夜さん、急にやる気になりましたね。多分裏切られた気持ちになったんでしょう」
「あー……あの男の事だし、きっとそうだろうな。おい京夜、ここは逃げた方がいいんじゃないのか?」
「嫌だ」
コハクの言葉に、俺はしっかりとスパエメちゃんソードを構えたままそう答えた。
アイツは酔ってるのか酔ってないのかどっちなんだ。こういうピンチな時だけマジメな発言しやがって。
するとセイレー……いや、騎士は、はっはっはとデカい声で笑いながら。
「滑稽だ! 実に滑稽だ! 貴様はあのロリロリしい少女に惚れていたのか!? そうかそうか、可哀想に! バカめ、あれは俺の変化術であってぎゃあああああああああああああああああああ!!!」
俺は、騎士に泣きながら斬りかかった―――――――!!




