謎人間
「よし帰ろうか。もう帰ろうか」
「そうですね。次は別の場所を探してみましょう」
「嫌です」
「ダメです」
即答してくるレインの首筋にプチ・サンダーを加えながら、俺はとぼとぼと森の出口までの道を出ようとしていた。
疲れた。もう俺疲れた。
「きょーや、この中で一番レベルが高いんだから、体力だってあるハズでしょ? ちょっとハンターカード見せてよ」
「ホレ」
俺は持っていたハンターカードをアークに手渡した。
記されているレベルは71。超高レベルと言ってもいいのだが……。
「あ、あれっ!? きょーや、なんでこんな……。私とステータス殆ど一緒だよ!?」
「俺のステータスはいくらレベルを上げても上がらないんだ」
転生した時点でカンストされてあるからな。まあ転生特典で身体能力の向上はあったけど。
なんかレベルを上げる意味がない気がする。いや、気がするじゃなくて絶対そうだ。
「うわー……やっぱきょーや魔力ポイントだけは尋常じゃないんだね。……あれ? でも知力が結構高いけど」
「そりゃお前よりかはいいだろうな。知力と魔力のハンターか……」
返してくるハンターカードを受け取りながら、俺はガックリと肩を落とした。
なんかもっとこう、強靭な肉体を手に入れて、敵を倒して、女の娘からキャーキャー言われてハーレムを送るという異世界転生での認識が勝手についていた。
どうやら現実はそんなに上手くいかないらしい。
いや、強靭な肉体っつったら悪魔化があるんだけど、俺は極力あの能力を使いたくない。
天使とか悪魔とか面倒くせえし、また天界だのどうだのに絡まれるのも嫌だ。
つーか俺は別に悠々自適にニート生活を送れればそれでいいのだ。別に前世に戻るなんて野暮な願いは持たない。
そんな事を考えていると、レインが気付いた様に言ってきた。
「京夜さんが敵察知スキルで探していけばいいんじゃないんですか? ホラ、京夜さんの敵察知って規模が大きいみたいですし」
「えー……。まあいいけど、お前敵察知スキルアースに教えてもらわなかったの?」
「教えてもらいましたけど規模が小さいんです。それにしてもあの人、結構いい人でビックリしました! やっぱ人は外見で判断しちゃいけませんよね!」
「お前がそれ言うのかよ……」
言いながらも、俺はしぶしぶ敵察知スキルを発動する。
「なんか全然反応がないな。100メートル先……いない。200メートル……いない」
魔物モンスターどころか、モンスターの反応すらない。
―――――が、しかし。
「……あれ。なんか1キロ先に、……人間か、あれ? がいるんだけど」
嫌な予感しかしない。




