美少女に囲まれている!
龍との戦いが終わった後。
俺たちは近くの飯屋に飲みに行っていた。
「お前さん、ホント凄かったぜ! あの魔法の使い方に、魔法使用の指示までやってくれてたもんなあ!」
「そうそう! カッコよかったぜ!」
ちなみに俺たちは、魔法使いの男達と飲んでいる。
こういうのは悪くない。明るい感じがして好きだ。
実をいうと俺は、魔法使用の指示もちょくちょくしていた。と言っても、大したことはしてなかったと思うのだが。
でも、こういう風に褒められるのは悪い気分ではない。
「はっはっは! まあ、お前さんよそから来たみたいだが、しばらくはこの村に泊ってくだろ? それまでこうやって飲みに行こうぜ!」
「おう! ……って言っても、炭酸のジュースだけどな!」
「ガハハハハハ!!」
未成年なので、当然酒は飲めない。
コイツらも未成年なので酒は飲めないらしいが……まあ、気分は盛り上がるしな!
それにしてもこの世界のジュースはやけに美味い。数少ない異世界での長所でもあるよ。
「お前さん達は、中々の美人だが……この男の、どういうところが良かったんだい?」
そう言って赤髪の男が、皆に話しかけた。
「そうですねー。うーん……。うーん……頼りになる!」
「おい待て。考えるまでの間が長すぎるだろ!?」
「ギャハハハハハ!!」
ライアの言葉に、俺は突っ込んだ。
もっといいところあるだろ!? 嘘でもいいからカッコいいとか言っとけや!
「レイン様、魔法は覚えたか? 木属性の魔法だぜ!」
「ええ! バッチリです!」
「前まで魔法を使えないニセ魔法神だったのに、からかうネタが無くなっちゃったね」
「ちょっとアークさん!」
「ハハハ! ニセ魔法神!」
そう言ってレインに魔法を教えてくれた男が、朗らかに笑う。
確かに、これから先からかえないと思うとちょっと寂しい。魔法を使えないニセ魔法神という称号がついてたのになあ。
そんな中、アルゼルトとシオンが、俺に耳打ちしてくる。
「ねえ、コハクがどっか行っちゃったけどいいのかしら。私の勘だけど、なんか嫌な予感がするわ」
「うん、私もそんな気する」
そう言われて、俺はハッと気が付いた。
確かに、コハクの姿がない。……やっちまったわ。
「ちょっと俺コハク探してくる! アイツ絶対……!」
そう言い残して俺は、席を立った。
ヤバイ。ヤバいヤバいヤバいヤバい。
ドリンクバーの所に行くと―――――案の条、そこにはコハクの姿があった。
「ストォォォォ―――――――――――――ップ!!」
俺がそう叫んだが、もう遅かった。
コハクはワインを注ぐと、それを一気飲み。ブドウ味のやつである。
……。
「どうしてお前はいつもいつも間違えるんだよ! 確かにちょっと分かりづらいが、よーく見れば分かるだろ!? ジュースと酒の見分けぐらい出来んだろ!? なあ!」
「う~ん……。おお、京夜か……」
「ちょ、早ッ!?」
早くもコハクは酔い始めてしまった。
ヤバイ、絶対面倒くさいことになる。なんとかしなければ。
俺はすぐさまコハクを背負って席に戻ると、皆に説明した。
「コイツ、酒飲んじゃった! コイツ酒癖悪いから俺の誤解を招くような発言ばっかすんだよ! なんかいい案ないか!?」
「ええっ!? マジか……。あ、テープならあるぜ!」
そう言って男が差し出してきたテープを受け取ると、すぐに俺はそれをコハクの口に貼った。
ふう、危なかった。コイツは取りあえず寝かせておこう。
俺がコハクを膝に乗せ、寝させてやってると、青髪の男が言った。
「そういやアンタ、名前はなんていうんだ? 俺はガルド。こっちの緑のがアースで、こっちの赤いのがレイトだ」
「俺か? 俺は、京夜。佐々木京夜だ。で、もう面倒くせえから俺がコイツら紹介しちまうと、ライア、アーク、アルゼルト、シオン。……この寝てんのは、コハクだ」
自己紹介の役目を奪われた皆が俺の手をつねってくる。痛い、痛いっす。
それにしても見事に赤、青、緑が揃ってるので、戦隊ヒーローっぽい。子ども達の憧れの的じゃん。
「賑やかそうで、随分楽しそうじゃねえか! いいなあ、羨ましいぜオイ!」
「いやいや、問題児ばっかだぜ? まあ、顔は美人のが多いけどなあだだだだだだだだ!!」
「問題児じゃないです!」
手をつねる力が増し、俺は言い終わる前に悲鳴を上げた。
「はっはっは! 楽しそうだなあ。男3人の暑苦しいチームにとっちゃあ羨ましいぜ!」
……なるほど、俺はなんやかんやで少女に囲まれてるのか。




