魔法作戦
「ッ……流石に数が多い! 一旦ここは引くぞ!」
他の魔法使いの声で、俺はゴキブリバスターと反対方向に向かって逃げ出した。
あかん。これは無理だ。数が多すぎる。
俺は木陰の方に隠れると、ハアハアと息を荒げた。
「なあ、アンタなんかいい案ないのか? 上級者のハンターなんだろ?」
休憩していると、俺の隣にいた魔法使いが話しかけてきた。
「んなこと言われたってなあ……。アイツらもどっか行っちまったみてーだし……」
「そうか……。まあ、監視カメラも壊されてしまったようだしなあ……。これでは敵がどこにいるのかが分からん」
マジか、ダメじゃん。
周りに皆の姿はない。多分、どこかでまだ逃げ回っているのだろう。
うーん……。
「……あ。あのさ、一つ提案があるんだけど」
「ん? なんだ?」
その魔法使いは小首を傾げる。
……これはひょっとしたら、いい考えかもしれない。
「俺、敵察知スキルを習得してるんだけど。俺の敵察知スキルは、規模が広いから10キロぐらいまでなら察知することができるんだ。……そこで提案なんだけど、ここから一旦どこか遠い場所に逃げて、遠距離の魔法で攻撃するってのはどうだ? 魔法使いの人達なら、そんぐらいの魔法は習得してるだろ?」
「まあ、一応は習得してるが……。でも、逃げるといってもどこにだ? このまま逃げ続けていたら、村にも被害が及ぶぞ」
確かにそれも一理ある。
俺たちの今現在いる場所は草原だが、これ以上反対方向に向かって逃げ続けると村に入ってしまう。
「うーん……。あ、じゃああの森なんてどうよ? あそこなら敵も入って来にくいし魔法は遠くから撃てるしで、一石二鳥だろ」
俺はすぐ近くにある森を指さした。
そこまでの広さはないが、敵はそんなに入ってこれないだろう。後は皆で一斉に魔法を撃てばオッケーだ。
「な、なるほど! いい考えだ! 俺、ちょっと受付嬢さんのとこ行って村の魔法使い達に知らせる手段がないか訊いてみるわ!」
そう言って魔法使いは去っていった。
よし、そうと決まれば今すぐ森に向かわなければ。流石にこの数じゃあ一匹一匹この場で倒していくのは不可能である。
「うおおおおおおおおおおおおあああああああ!? ちょ、キモイ! キモイからこっち来んじゃねえ!」
近づいてきたゴキブリバスターをスパエメちゃんソードて斬りつけながら、俺は森へと向かった。
……俺、虫嫌いなんだよおおおおお!!




