スライム回避
「……皆さん。これには、村の危機が掛かっています。現在飛行中の監視カメラによって数を確認したところ、300匹ほどの数のモーイド・バスターが確認できました。また、紫のドラゴンにも注意が必要です。……装備を整え次第、直ちにハンターの皆さんはモーイド・バスターの討伐に取り掛かってください!」
俺たちは、クエスト受付窓口にて、受付嬢の指示を聞いていた。
結局、こうなった。あのゴキブリとは二度と戦いたくなかったが、こうなってしまった。
嫌だもう俺宿で寝たい。そもそもアールドハンクの村なんかに行くって時点で間違いだったのだ。
「おうおう! お前さんは見ねえ顔だが、ハンターだよな? 剣士がここに来るなんて珍しいじゃねえか、頼りにしてるぜ!」
「お前さん達は上級者のハンターみたいだし、楽勝だよな!」
俺たちに、デカい男達が話しかけてきた。
いや、期待しないでほしい。魔法使いが殆どの村に剣士がいたらそりゃあ珍しいんだろうけど、大した戦力にはならないと思うので本当に期待しないでほしい。
「まあ、これが終わったら一緒に飲みにでも行こうぜ! お前さん達ももう俺たちの仲間入りだ!」
「そうだそうだ! パパッと終わらせちまおうぜ!」
「は、はい!」
ついつい敬語での返事になってしまうが、悪い気はしない。
明るい人達が多くて良かった。なんかこれなら、すぐに俺も馴染めそうだ。
そんな中、アークが。
「ね、ねえきょーや。私もうあのスライムにべちょべちょにされるの嫌なんだけど。またあれのせいでシャワー浴びるハメになるの、嫌なんだけど!」
「んな事言ったって、しゃあねえだろ。300匹ぐらい、すぐに終わらせちまうぞ!」
明るい男達に続いて、俺もモーイド・バスターの討伐へ向かった。
魔法使いの人達もいることだし、大丈夫だろう。スライムは俺も嫌だが、躱せばいい話だ。
■
――――――数分後。
「うおおおおおおおおおおおおおお!? 多いっ! 多すぎるだろおおおおおおおおお!!」
俺たちはゴキブリ相手に必死に逃げ回りながら、魔法だの剣だの弓だのを試しまくっていた。
非常にヤバい。数が多すぎる。
「くっそ……『ウォーターデッド・ファイナルフリーズ』!」
俺は何とか水魔法で足止めしながら、必死にゴキブリバスターから逃げ回る。
そんな中、先ほど笑いかけてきた男の一人が。
「お前さん! 剣で前のモーイド・バスターを喰い止められるか!? 後ろの方は俺がやる!」
「わ、分かった!」
俺は鞘からスパエメちゃんソードを引き抜くと、前に構える。
俺の目の前には、50匹ほどのゴキブリバスターが迫ってきている。キモイし怖いし最悪である。
そんな中、俺の後ろに立っていた冒険者たちが。
「『ファイアー・トルネード』!!」
「『サンダー・オブ・ブラスト』ッ!!」
「『リーン・スパイラル』!!」
魔法を唱え、多くのゴキブリバスター達が攻撃されていった。
す、すげえ。流石は魔法使い。
「後はアンタに任せた! お前ら、行くぞ!!」
「おお!!」
そう言って、魔法使い達は去っていった。
去り方もカッコいい。もう全てがカッコいいわー。
しかし、俺の前にはまだまだ多くのゴキブリバスターの姿。チッ、キモイ。
「うおおらああああああああああああああああああ!!」
俺はスパエメちゃんソードでゴキブリバスター集団を叩き切ると、飛んできたスライムを身体を捻って回避した。
アレに当たったら多分終わりである。ヌルヌルで滑って攻撃されて即死の3連コンボ。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!? ちょ、待ちたまえ!」
次々と飛んでくるスライムを俺はギリギリで躱す。
なんか汚さそうなので、余計に回避に気合いが入る。絶対に当たりたくない。
そんな俺の様子を見て、後ろにいた女魔法使いの方々が、ポツリと。
「あの人顔はあんまイケメンじゃないけど、躱すのだけは早いのね」
「おい、褒めるならもっとこうなんかあるだろ」




