ゴキブリ、再び襲来
氷を溶かした事によって、罰金を払わされた俺たちは。
宿への道のりを歩きながら、深くため息をついていた。
「いや、ホントすまん。今回は完全に俺のせいだ。すみませんでした」
「……それはそうと、罰金の金額2万ゼニーって酷くないですか? 2万ですよ?」
「まあ、別にそんぐらいの金額構わないさ。またクエストでも行って稼げばいいんだし」
俺はなるべく前向きな考え方をしながら、レインを探した。
アイツ、見当たらねーな。もう先に宿に戻ってるのだろうか。
「でも、平和って感じだけどね。魔王グループの幹部が襲って来たって話だったけど」
「なー……ホントに……って」
そこまで言って、俺は自分の口を塞いだ。
……こんなことを言ったら、絶対またフラグになるに決まっている。
「? どうしたの?」
「いや、何でもない。そうだよな、流石にそんな事……いやこれも言っちゃだめだな」
ヤバイ。これ絶対何かが襲ってくるヤツだ。
試しに俺は、敵察知スキルを発動してみる。
「……お、おい。なんか8キロぐらい先に、ものすごい集団が見えるんだけど。嫌な予感しかしねえ」
敵察知スキルは千里眼のようなものではないので良くは見れないが、黒いということは分かった。
……しかも、もの凄い勢いで、この村に向かって突進してきている。
そんな中、村にいた魔法使い達の声が響いた。
「おい! モーイド・バスターの集団が現れたぞ! 皆で喰い止めるんだ!」
「受付嬢さん! モーイド・バスターの他にモンスターはいるか!?」
「えっと……映像を見る限り、何やらモーイド・バスターの他に闇の龍がいるような気がしますが……ハッキリとは確認できません!」
……えー……っと。
どうやら会話を盗み聞きしたところ、モーイド・バスターがこの村に襲って来てるらしい。
俺の敵察知スキルだと、もう結構近づいてきていることが分かる。
……いや、待て。
「なあ、俺もうあんなゴキブリと戦うの嫌なんだけど。逃げる? よし、逃げようか」
「わ、私もあのスライムはもう嫌ですッ……!」
「いや、待て待て」
逃げようとする俺たちの肩を、コハクが掴んだ。
嫌だ! もう俺疲れた!
「それでもお前たちはハンターか? 危険があるのなら、自分の命を代償にしても他人の命を守る。……それが、ハンターというものだろう?」
「お前、クソマジメだな。俺は自分の命は自分で守れと世界中に広めたがるような男だ。何故自分の命を他人の命に変えなくてはならないのだ?」
「なっ……! いいから行くぞ!」
「嫌よおおおおおおおおおおおおおおお!! 俺もう疲れたのよおおおおおおおおおおおおおお!!」
奇声を上げながら、俺はコハクに引きずられていった。




