美女と野獣
「……おお。なんか賑やかだな」
村の辺りを歩きながら、俺はそう言った。
やはり魔法使いが多い。剣士や弓使いがいるのは俺たちのチームだけみたいだ。
「ホラ、お前誰かに頼んで来いよ。魔法使いならいっぱいいるぜ?」
「う、うう……。でもその、魔法教えてもらうのって恥ずかしい気が……」
「こういう時だけ恥じるお前は一体何なんだ。『魔法教えてください!』とでも言えばいい話だろ? ……しゃあねえ、俺が言いに行くから手を強く握るのをやめてくださあだだだだだだだだだだ!!」
喋ってる途中でレインが無言で俺の手を握って来たので、俺はしぶしぶ歩き出した。
コミュ障じゃないんだから、頼むくらいのこと出来んだろ。俺だってコミュ障改善できたんだぞ。
「あの、すみません。何でもいいので、魔法教えてくれませんかね? なんか、魔法を覚えたがっている友人がいるんです」
「む? この村に来て、魔法を使えないとは。新米ハンターか?」
「まあ、そんな感じです。というか、友人というのは魔法神レイン……の事です。はい」
「……何!? そういえば、最近コトネさんから魔法神レイン様がこの村に来たって聞いたな」
「ええ。その魔法神レイン様ですよ。魔法を使えないらしいので、教えてやってくれませんかね?」
「喜んで!」
俺が頼んだガタイのいい男ハンターは、俺についてくるとすぐさまレインの方を見た。
「おお! レイン様! なんと美しい……!」
「……!?」
その男を見たレインは、驚愕の表情を浮かべた。
そして、こそこそと俺に耳打ちしてくる。
「ちょっと! 何あんなキモデカ野獣ハンター連れてくるんですか! こっちの事もちょっとは考えてくださいよ!」
「はあっ!? お前、外見だけで人を判断するんじゃねえ! いいか!? 世の中にはな、知らないだけで優しい人達がいっぱい居るんだぞ! よく言うじゃねーか、ヤクザみたいな格好してても中身がすげえ優しかったって! それとおんなじだよ!」
「い、嫌ですよ! あの人セクハラしてきそうです! 野獣です!」
「うるせえ! ガタイが良いってだけでセクハラ人間と判断するんじゃねえよ!」
「どーせ男は野獣なんですよ! 美女と野獣です!」
「自分で美女って言っちゃったよコイツ!? いいから行って来い!」
俺は男の元にレインを預けると、踵を返して歩き出した。
……涙目でレインが抵抗しているが、力では勝てないだろう。
「ね、ねえ京夜お兄ちゃん。レインさん放っておいて大丈夫なんですか? 嫌な予感しかしないんですけど……」
「大丈夫、魔法を覚えられればそれで解決だ。あの男に魔法を教えてもらうことを乞いてやった俺にも感謝してほしいよ」
……うん、アイツならきっと大丈夫。




