魔王のボス目標
「うう……ひどい目に遭いました……」
アルゼルトの魔法によって、何とかゴキブリ集団から逃げられた俺たちは。
アールドハンクの村をうろつきながら、コトネに村長の家まで案内してもらっていた。
「うう……水でべちゃべちゃ……」
「ああ、分かってるよ、怖かったな。もう大丈夫だから、な?」
泣きついてくるライアの頭にポンポンと手を乗せながら、俺は村を歩き続ける。
「てか、俺たちは本当に観光してるだけでいいのか? このニセ魔法神を連れてきたところで、なんの得もないぞ?」
「え、えーっと……ですね。実は、他の理由もありまして……。その、最近この村に魔物モンスターの襲撃があったんですよ。前までアルゼ村を襲っていた魔物モンスターが、今度はこの村に現れたみたいで……。中には、魔王グループの幹部がいたとの情報も入っています。そこで、上級者ハンターの皆さんに協力していただけたらありがたいなと……」
そう言ってコトネは、おずおずと頭を下げた。
……そういえば、コイツらにも言ってなかったことがあるっけな。
「なあ、お前ら。実は俺は最近、本当に達成したいなと思っている目標があるんだが」
「なんですか? 世界の幼女を求め旅するんですか?」
「もしそう思ったなら、脳の解剖をしに今すぐ病院に行くよ。悪いが俺の頭はそこまで腐っちゃあいない。……魔王だよ魔王。俺とライアとアークの3人だった最初の頃に、魔王グループのボスを倒すって決めただろ」
「ち、ちょっと京夜さん……」
俺の言葉に、レインがこそこそと耳打ちしてきた。
「願い事を叶えてもらう、という願いですか? まさか本当に前世に戻っちゃうんですか……?」
「……ああ、分かった分かった。前世には戻らないよ。ただ、悪魔の能力をなくせたらいいなと思って」
俺のその言葉に、レインが安心したような表情を見せた。
最近では、もう前世に戻んなくていいやと思い始めてる。引き籠ることはこの世界でも可能だし、正直コイツらと離れるのも辛い。
そんな俺たちを見て、アークが。
「ああ、あったねそんな目標も。でもハードル高くない?」
「おい待て。決めた張本人が何言ってやがる」
コイツが確かボス倒すとか言い始めたんだ。よーく覚えてる。
あの時は随分と無謀な事のように感じたが……なんやかんやで俺たちは強くなっている……ハズだ。うん。
魔物モンスターとも結構戦ってきたし、無理ってことはないんじゃないだろうか。
……ああ、ニート生活がしたい。俺の頭にはそれしかない。




