ゴキブリ集団
家を出て、2時間程経った頃。
俺は愚痴をこぼしながら、ただひたすら道を歩き続けていた。
「なあ、まだー? いい加減俺疲れたんだが」
「そうですね……。多分、あと1時間程かかるかと……」
そのコトネの言葉に、俺はガックリと肩を落とした。
これまでモンスターの出現もなく楽に進んでいたが……もう足の限界である。
そんな中、コハクが。
「というか京夜は、体力がなさすぎだろう。このチームの中で一番レベルが高いというのに……」
「俺の体力はレベルには依存しない。疲れたら疲れる。ただそれだけだ。というか俺は別に体力が無いワケじゃない。伊達にモンスターに襲われてないからな。今は疲れてきたから、己の欲望のままに疲れたと言った。ただそれだけだが、何か?」
「いや、『何か?』じゃなくてだな。何故お前はそんなに自慢げに言ってるんだ……?」
コハクが首を傾げながら、こちらを見てくる。
俺はハッキリ言って、いくらレベルを上げてもステータスは上がらない。
まあ転生したとき、既にステータスはカンストされてるらしいからな。だが元のステータスが低いので、これから俺は一切成長しないということだ。
てか足が痛い。
「なんか、ホントにモンスターとかも出てこないですねー。平和です」
「お、おい待て。お前そんな事言ったら絶対……」
レインのフラグ発言に、慌てて俺は敵察知スキルを発動した。
……。
「……なあ、なんか奇妙な擬音が聞こえるんだけど。ドドドって……」
「え? 右? 左?」
「いや……前だな。なんかよく見えないけど……黒い」
俺の言葉に、全員の顔が青ざめた。
ピピまでもが、小さく悲鳴を上げている。
「おい、近づいて来てる。ヤバい、逃げるぞ」
しかし―――――俺がそう言った時には、もう遅かった。
逃げようと背中を向けたが、その後ろから擬音が増していき――――――
「「「「「「「あああああああああああああああああああああああっ!?」」」」」」」
―――――ゴキブリ巨大化みたいな生物が、何十頭も俺たちに向かって突進してきていた。
「ああああああああああ!? ねえ、何アレ!? キモイ! あああ追いつかれるあああ!!」
「あ、あれはモーイド・バスターというモンスターです! 口から粘液を飛ばすとの情報があるので、注意が必要です!」
「ゴキブリだろ、あれは!?」
ライアの発言に突っ込みながらも、俺は逃げ続ける。
なんで異世界にまで来てゴキブリと戦わなくてはならないのか。本当に理不尽である。
しかし、このままではヤバイ。殺らなきゃ死んじまう。
俺は決心すると、突進してくるゴキブリバスター達に向かって剣を構えた。
「京夜、逃げろ! 今はカッコつけてる場合じゃないだろ!」
「いいから早く行け! 俺はいいから!」
ギリッと歯を食いしばり、俺は魔法杖を取り出した。
いつもは使わない魔法杖だが、コレを使うと魔法の威力が上がるらしい。なんで今まで使わなかったんだろう。
俺は小さく息を吸うと、呪文を唱える。
「『ウォータースパイラル・フリーズカインド』ッ!」
最上級の氷水魔法である。
俺は何とかそれをゴキブリ集団に放つと、別の魔法の詠唱に移った。
「『カールド・フィース』ッ!!」
創造魔法を俺は使ってみた。
俺は創造魔法で短剣を数本創造すると、それをゴキブリ達に向かって投げつける。
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
悲鳴を上げ、短剣を投げつけられたゴキブリはその場に崩れ落ちた。
だがしかし――――――。
「シャオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「おい、嘘だろ!? 飛ぶのかよ!?」
ゴキブリ達が翼を生やし、こちらに猛突進して来た。(かなりキモイ)




