おっはよ――――――!!
「きょーやー! 朝だよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そう叫びながら、アークが俺の布団を引っ剥がしてくる。
眠い。朝っぱらからデカい声で叫ぶな。
俺は悲鳴を上げながら、必死に抵抗する。
「嫌よおおおお!! 俺はまだ寝たいのよおおおおおおおおおお!! 分かる!? この辛さ!? この後俺にどうせ朝飯も作らせるんだろ!? 嫌ッ! 死んでもやらないわああああ!!」
「そんな事言ってないでホラ! さっさと起きて!」
「嫌よ! 俺はもうこの布団に引き籠るのよおおおおお!」
俺の悲鳴に、皆が起き上がって眠そうに目を擦る。
しかし今はそんな事関係ない。まずは睡眠時間の確保だ。
「とにかく俺は嫌よ! 死んでもここから離れないわ! ……そこまでして俺を布団から出させたいなら、勝負するか!?」
「いいよ! その勝負乗った!」
「先手必勝ォ! 『ウォーター・ブリザード』!!」
俺は速攻で水魔法を唱えた。
好戦的なアークだから、絶対勝負は挑むと思ったのである。氷結効果はないものの、朝っぱらから冷たい水は辛いだろう。
しかしアークは、ふっ、と不敵な笑みを見せてから。
「もう私、きょーやの魔法には慣れたよ。丁度後でシャワー浴びようと思ってたから、気持ちいいくらい。……さあきょーや、布団から出よう?」
「お、おい待て、早まるな……」
「『ウォーター・バインド』ッ!!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
アークの水魔法が、俺へ炸裂した!
■
ビチョビチョになった服を脱ぎながら、俺はエプロンを身に着けた。
死ぬほど嫌だが、朝食を作らなくてはならない。死ぬほど嫌だけど。
「サンドイッチでいいか……。あれ、レタスは……」
冷蔵庫にあったレタスがないことに気付き、俺は慌てて後ろを振り返る。
するとそこには、あーんとレタスを丸かじりしようとするシオンの姿。
……。
「シオンちゃーん? それはそのまま食べてもあんま美味しくないから、京夜お兄ちゃんに返してね?」
「な、なんですかその口調……。でも私、お腹空きました」
「じゃあこれあげるから、ここを今すぐ離れてくれないかな?」
「なんでですか?」
「はよしろ」
俺はシオンにヨーグルトを投げ渡すと、額に垂れてきた汗を拭った。
こんな感じで、ちょっとでも油断するとトラブルが起きる。いやあ、なんかもう大変だよね。
「京夜、私の服知らないかしら? アールドハンクに行くまで、そんな重装備で行く必要もないでしょ?」
「うん、それは分かるけどなんでキッチンに来た?」
「変態の京夜の事だから、私の服盗んだのかなーってひゃあああああああああああ!!」
言い終わる前に、俺はアルゼルトの首筋辺りにウォーター・バインドを放った。
そして一言。
「お前、朝食抜きがいいか?」
「……はい。ごめんなさい」
「よろしい」
俺はザクザクとレタスを刻みながら、アルゼルトに答えた。
あー、なんかもう疲れた。アールドハンクに行く前に疲れちゃった……。




