魔法悪用
「なあ、悪かったって。悪かったからお前ら、俺のコーヒーにメープルシロップ入れてくるのはやめてくれ」
怒った皆は、俺のコーヒーに大量のメープルシロップを投入してきた。
「分かった、分かったってば。な? ……お前らは素晴らしい人間だ! 褒めるなら、そうだな……。ホラ、言うじゃないか! えーと……多少バカな方が、可愛いって! な!?」
必死になって、俺は言葉を探す。
すると、やっとライアが口を開いてくれた。
「……はあ。まあ、もういいですよ。なんか服が牛乳臭くなりそうで嫌ですけど」
「あ、それなら丁度いいや。これ見てくれよ」
俺はそう言って、読んでいた魔法ガイドブックをライアに見せた。
「この浄化魔法ってやつ。なんか水魔法使える人なら誰でも使えるらしいし、やってみるわ。……えーと……『ブルー・ラガード』」
俺がそう唱えると、ライアの服はどんどん綺麗になっていき、やがて新品みたいになった。
するとそれに驚いたのか、コトネが。
「……すごいですね。そんなに早く魔法を覚えられる人は、中々いませんよ。京夜さん、上級者の魔法使いなんですか?」
「いや、そういうワケじゃないんだよ。剣士でもあり魔法使いでもあるからなあ。まあ、最近魔法ばっか使ってるけど」
「最近魔法を便利に使いこなしちゃって悪用してますけどね」
「それは言うな」
と、そこで俺は一つの事を思い出した。
……そういえば、コイツらに見せてやるの忘れてたっけか。
「レイン。俺、創造魔法、一応使えるようになったんだぜ? 前、レーディルに教えてもらえとか言ってただろ? なんかそんなデカい物は創造できないけど、小さい物ならできるようになった」
「な……。そ、創造魔法まで覚えちゃったんですか……。よし、いいでしょう。ならばやってみてください」
「よかろう。じゃあ……『カールド・フィース』!」
俺は魔法を唱えると、ふう、と一息ついた。
俺の手の上にあるのは、時計。なんか適当に思い浮かべて創造してみた。
創造と言っても、なんでも創れるワケではない。生物は無理だし、金なんかも無理だ。金はなんか特殊な素材で作られているらしく、創造じゃまずできないらしい。
「……悪用しないでくださいね?」
「しねえよ」
俺はそんな事はしない。なぜなら紳士だから。
「まあ、それは取りあえず置いておいて。……明日は、アールドハンクの村に行けばいいんですよね? 私たちはどうすれば……?」
「あ、えっと。村長にでも会っていただければ結構です。宿はもう取ってありますので、後は観光でもしていただければなと……」
……何回も思うんだけど、この魔法神を村に招待したところで一体何の意味があるんだろう?
魔法使いが多くいる村らしいが、レインは魔法を使えない。
なんか勢いで行くとかなってるらしいが、めちゃくちゃな事が多いなあ。まあ、いつもの事だけど。
「でも、コトネはなんでここにレインがいるって分かったんだ? 誰かに聞いたのか?」
「あ、その……。警察の方たちが、『佐々木・京夜という変態に、魔法神レイン様が付き添っていた。きっとレイン様が降臨してくださったのだろう。佐々木・京夜という害虫は今すぐ殺さなきゃな』、と……」
「よし警察官殺そうか」
俺、もう警察嫌い。




