疲れた疲れた休みたい
「…………」
俺の勘が面倒くさい予感しかしないと反応している。
俺はそっと玄関の扉を閉めると、鍵を掛けた。
「ち、ちょっと!? すいません、開けてください!」
ドンドンという音が響き、少女の叫び声も聞こえる。
悪いがこれ以上面倒くさい事には巻き込まれたくないのだ。今帰って来たばっかだぞ。
「まあまあ、京夜さん。なんか私に用があるみたいですし、開けてあげましょうよ」
レインがそんなことを言ってくるが。
「なあ、あの子お前の知り合いか? 魔法神様とか言ってたけど」
「さあ? あんな子知りませんよ」
「じゃあ俺も知らねえよ」
俺はベッドにボフッと寝っ転がると、静かに目を閉じた。
ただでさえ疲れているのだ。俺は面倒な事には付き合わねえぞ。
俺は扉を開けるレインの姿を横目で見ながら、何の用なのかを確認する。
「……ふう。……あ、貴方はっ!?」
「え、えっと……なんか私に用があるみたいでしたから、開けて見たんですけど……」
「じゃ、じゃあ貴方が魔法神レイン様なのですね!」
「え、ええ……」
レインがそう言うと、少女は嬉しそうに表情を輝かせた。
……魔法を使えない魔法神に会って、何が嬉しいんだろう。
俺が疑問に思っていると、少女が俺たち全員に向かって。
「初めまして、私はコトネといいます。今日はちょっと、ここに魔法神レイン様がいると聞いて来ました」
そう言うとコトネと名乗ったその少女は、ニコリと微笑んだ。
なんかコトネって日本人でもいそうな名前だな。漢字にするとおそらく「琴音」だろう。
外見からして、俺より2つぐらい年下だろうか。最近ライア、アークは16歳になったらしいので……まあ15か16ぐらいだろう。
……んで、ニセ魔法神に何の用だろうか。
「実はですね……。最近、アールドハンクに、魔法神レイン様が住んでいるとの情報が入りまして」
「……アールドハンクって何かしら?」
「えっと……魔法使いが多く住んでいる村のことです。初心者から上級者まで、多くの魔法使いがアールドハンクには集まっているんですよ」
「へえ……」
アルゼルトは、コトネの返答に小さく頷いた。
ふむ、魔法使いが多い村か。ちょっと気になるような気もするけど。
「魔法の創造者レイン様を是非村に招こうと思いまして。……アールドハンクに来ていただけないでしょうか?」
「喜んで!」
レインは即答すると、コトネと手を握り合った。
……いや、待てよ。
俺はコハクにこそこそと耳打ちする。
「……なあ、俺はハッキリ言って行きたくないんだが。疲れてるんですけど? ていうか、まだ帰って来てから、1時間も経ってないんですけどお? ねえ、何コレ嫌がらせ? 俺キレるよ? 理不尽すぎんだろお?」
「うん。気持ちは分からんでもないが、一旦落ち着け。……アールドハンクといえば確か、多くの魔法使いが集まる有名な村だぞ? 行ってみる価値はある」
「そもそも労力を費やしてまで村に行くという時点で、価値もクソもないんだよ? ねえ?」
俺はそこまで言って、深くため息をつく。
何なの? ねえ、何なの?
何なのとしか言いようがないんだが、これはあまりにも酷すぎる。もう少し休みたいんですけど。
「……まあ、京夜さんの考えてることは分かりますよ? まあ、今すぐ出発しなくてもいいでしょう。……コトネさん、今日は泊っていきませんか?」
「い、いいんですか!? じゃ、じゃあ……」
それはそれで疲れるんだよ。なあ?
明日7時投稿無理です。すんません




