ふう、終わっ……てない
再び時が戻り、俺の視界も森の中へと変わる。
先ほど、俺がとどめを刺そうとしていた瞬間だった。
「――――――ぐっ!?」
再び頭痛が走る。
しかし、今度は執拗なものでなく、すぐに治まった。
多分、アイツの魂が俺の体から抜けていったんだろう。
「…………」
俺は地面にへたりと座り込むラグナロクを見下ろしながら、スパエメちゃんソードを鞘に納めた。
そして、怯えるラグナロクを見ながら。
「お前は、元は人間なんだろ? ……だったら、殺すワケにもいかないな。お前を殺す気はないから、とっとと帰ってくれ」
「……へ? 何故、貴様がそれを……」
突如豹変した俺の態度に驚いたのか、ラグナロクは間抜けな声を上げた。
なんでコイツが聖騎士なんかになったのかは知らんが、まあそんな事はどうでもいい。
俺は他人のすることに口を出さない男。自分に支障が出るならともかくだが、そうじゃないならわざわざあーだこうだいう道理もない。
「あーもう、いいからどっか行ってくれよ。ゾンビの魂送っちゃったのは謝るからさ」
優柔不断なラグナロクにそう言い放ちながら、俺はくるりと方向転換した。
「……まあ、いいだろう。貴様には勝てそうもないし、今は引くとするか」
そんな声が聞こえたかと思うと、ラグナロクは翼を大きく広げ、天界へと戻っていった。
俺はその姿を見ながら、自分の顔面をなるべく痛くないように殴る。
……ふう、行ったか。
ったく、最近面倒な事が多くて困る。俺はもっと楽に異世界生活を送りたいんだけどなあ。
……まあ取りあえずラグナロクを撃退したことだし、しばらくは面倒な事は起こらないハズである。
――――――と、思ったその時。
「……ん? ってうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!??」
前にも見たことがある炎玉が、俺へゴロゴロと転がって来ていた。……猛スピードで。




