警備員さん、こんにちは
「さ~て。鍵はどーこだ~」
俺は休憩室内をうろつきながら、ため息混じりにそう漏らした。
係員さん凍らせちゃったから鍵の場所聞き出せない。やっちまったわ。
そんな事を考えていると、ふと一つのテーブルに目が行く。
「お、コーヒーじゃん。ちょうど喉乾いてたし、貰うか。……あ、鍵あった」
トポトポとコーヒーを近くにあったコップに注いでいると、テーブルの下に鍵があるのが分かった。
ラッキー。こんなに早く見つかるとは。
俺はコーヒーを啜りながら、優雅な時を過ごす。
まあそんなに急ぐこともあるまい。確か餌までの時間はまだあったハズ……。
しかし、俺がそんな事を考えていると。
「動くな! 警察だ!」
「……!?」
バンと休憩所のドアが開かれ、大勢の警察官がゾロゾロと入ってくる。
中には、ガイアドラゴンに目つぶしをして逮捕された時お世話になった警察官の方もいた。
うえー、何人いんだよこれ。30人以上いるんじゃねーか?
「貴様は、もはや終身刑ではない! 死刑だ! 貴様の様な神聖なるドラゴンを汚すゴミは天に召されぎゃあああああああああああああああああああああ!?」
「おい、うるさいぞお前。あいにく、俺は面倒くさいことは嫌う男。さもなくばお前らに俺の超カッコいい氷水魔法が炸裂するぜ?」
俺はその警察官にウォーター・バインドを放つと、すぐさまサンダー・レインでマヒ状態にさせた。
バインド効果&電気魔法だ。しばらくは動けないだろう。
「撃て撃てえ!」
「『ウォータースパイラル・フリーズカインド』!」
俺は氷水魔法の中でも特に最上級の魔法を唱えた。
警察官30人ほどが全員凍らされ、部屋一面が凍っていく。
危ねえ、こんなに早く拳銃を取り出してくるとは思わなかった。流石に俺も弾丸は避けられない。
「ったく……もっとスマートにやるもんだぜ……」
俺は体力切れの身体を何とか動かしながら、休憩室を出た。
それにしても、なんでこんなすぐに警察が来たんだろう。ひょっとして、もう既に動物園に警備員がいたのだろうか。
俺は大罪人扱いされてるらしいし、まあ警備員の一人や二人いてもおかしくないと思う。ただ、30人もいるかなあ?
ガイアドラゴン、恐るべし。
「……っと、ここか。ってうわああああああああああおおおお!?」
俺がガイアドラゴンのオリを見つけると、すぐにそのオリの中からぬっと巨体が現れた。
どうやら寝ていたらしい。ガイアドラゴンは気怠そうに地面から体を起こすと、俺の方を見る。
「えーと……これでいいんだよな。よし、開いた」
俺がオリを開けてやると、ガイアドラゴンは嬉しそうにオリから出てきた。
行くぞ、と俺が言うと、ガイアドラゴンは。
『感謝するぞ。いつかの人間よ』
……喋った。




