俺は……ゴリラじゃない
「うっ……うっうっ……」
そして俺は、再びオリの外で泣き出した。
ニートだった頃が懐かしい。あの時は楽しかったなあ……。
毎日ゲームやらアニメを観て、親の作ってくれた飯を食い、学校にも行かず部屋に引き籠る。
そんなある日、とうとう外に出ろと追い出されたワケだが……あれが全ての始まりだった。
そもそも滑り台で死ぬとかいう時点でおかしかったのである。
二次元こそが俺の糧となっていたが、この世界には当然ゲームもアニメもない。テレビはあるが、アニメなんてものはない。
元凶はもちろんあの悪魔のオッサン。こんな異世界転生なんて聞いてないんですけど。
やっぱり二回目に死んだ時、カッコつけないで前世に転生してれば良かったのかもしれない。
せめてアニメがあればなあ……。
よし、こうなったら、魔王グループのボスとやらを倒すしかない。
レインの話じゃ、ソイツは願いを叶えてくれるらしい。モンスターのくせに、随分と優しいものだ。
「……でも、取りあえずこの状況をどうにかしねえとなあ」
そんな高い目標を胸に刻んだところで。この状況は打破できそうにない。
絶対このままオリの中入っても襲われるだけだしなあ。もういっそここで待っちまおうか。
……いや、ダメだ。係員さんが餌をやりに来てしまうハズだ。その時に絶対見つかる。
…………。
「うらああああああああああああああああああああ!!!」
もうなんか色々嫌になった俺は、ゴリラマスクを脱ぎ捨て、鍵のあると思われる場所へと向かった。
この際もう見つかっちまってもいいや。多少強引にでも、ガイアドラゴンを連れ出してしまえばいい。
俺はそこの扉を乱暴にぶち開けると、叫ぶ。
「おらあああああああああああ!! テメエらさっさとガイアドラゴンのオリの鍵出せやあああああああああ!!」
「「「「「「……!?」」」」」」
そう、俺が飛び込んだ先は――――――係員の休憩室。
多分ここにガイアドラゴンの鍵はある。
いや、よーく考えてみろ? 何が悲しくてゴリラのふりしてモンスターの鍵を盗まなきゃいけないんだ?
大体マスクだけじゃバレるだろうし、何せ俺は一応は人間だ。ゴリラのふりをする必要なんてないだろ。
そう考えると今まで考えてきた計画が全てパアになってしまうが、もうこの際そんな事はどうでもいい。
「お前は……知っているぞ! ガイアドラゴン様に傷を与えたという……」
「動くな! 動けば今すぐに……」
「『ウォーターデッド・ファイナルフリーズ!』からの『サンダー・レイン』!」
「「「「「「!?」」」」」」
俺が放った二種の魔法に、係員さん達は成す術なく凍らされていった。
同時にその氷に電撃が走り、係員さん達は悲鳴を上げる。
「ふ……ふふふふふふふ……」
とうとう本格的におかしくなった俺は、嬉々とした表情で叫ぶ。
「ひゃっはあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
勝った……勝ったぞ……!
明日、7時最新無理です。すいません。




