ゴリラに溶け込む? 無理でした。
ボルシャックにガイアドラゴンき救出作戦を頼まれてから、丁度3日が経った頃。
俺たちは街に戻り、動物園へとやって来ていた。
「なあ、取りあえず今は大丈夫だよな? フードで顔隠しとけば……」
「ええ、問題ないと思いますよー」
ちなみに俺たちの格好は私服。別に装備を着ていく必要もないしな。
ガイアドラゴンも襲ってくることは……まあ、大丈夫だろう。私服の方が走りやすいし。
「うし、じゃあ俺行ってくるわ。お前らはなんかあった時のためそこで待機しててくれ」
「「「「「「了解!」」」」」」
俺は皆の返事に頷くと、ゴリラのオリへと走っていった。
ちゃんと計画は考えてある。
まず最初に、俺がゴリラのオリへと入る。そして、気付かれないようにゴリラたちの群れに溶け込む。
その後餌を食べるためにオリが解放される時間帯があるらしいので、俺はその時にオリから抜け出す。
んで、こっそりとその群れから去っていき、ガイアドラゴンのオリの鍵を探す。これで大丈夫だろう。
最初っからゴリラの群れなんか溶け込まなくていいじゃんと思うかもしれないが、これは必ずしなくてはいけない事なのだ。
何故なら、俺は指名手配されてるらしいから。いやあ、俺もう大罪人扱いされちゃってるよ。
だから俺は不自然ではないようにゴリラのオリの中へと入り、餌の時間帯に脱走する。不本意だが、本当にこれしかなかったのだ。
「……お、ラッキー。ここから入れるじゃん」
ゴリラのオリに扉みたいなのが付いていたので俺はそれを開け、ふう、と息を吐いた。
岩なんかもあるので、顔だけ出していればOK。顔はゴリラでも服はゴリラじゃないしな。
「うっ……ううっ……」
しかし、ついに俺は泣き出した。
「酷いよ……あんまりだよ……何だよコレ……」
なぜ異世界に来て、ゴリラの群れに溶け込まなくてはならないのか。
幸い今日は人が少ないみたいなので見つかるという事は無いだろうが、これはあんまりである。
何? 何なの? 俺に何をやらせたいの?
俺は異世界に来てゴリラと交流を深めたかったワケではない。どうせならもっと常識のある美少女と交流を深めたかった。
「……ってあだだだだだだだだだだだだ!? ちょ、やめろあああああああああああああああ!!」
俺はなぜか、ゴリラに襲われた。
痛い。痛い、やめろや。
ひょっとして、敵意を抱かれているのだろうか。
「あああああああああああああああああああああああああああ!?」
……開始5分も経たない内に、俺はオリから飛び出していた。




