ゴリラ変装
『我には、どうやら悪い噂が流れているみたいでな。世界を亡ぼす、悪のドラゴンだと』
「ふーん。マジで?」
『いや、我はそんな事はしないぞ。平和に暮らせていければ、それでいいのだ。人間を殺した事もないし、これから殺すつもりもない』
「なんじゃそれ」
ドラゴンってもっと、凶悪なもんじゃねーのかよ。いや、別に安全だしいいんだけどさ。
……それよりも。
「ガイアドラゴンを、助ければいいんだな? じゃあ、どこに連れて行けばいいんだ?」
『そうだな……。ここから少し先の所に、大きな森がある。そこに、ガイアドラゴンを連れて来てくれ。……三日ぐらい待てばいいか?』
「おうよ。絶対助けて見せるぜ」
ラッキー。めちゃくちゃラッキーじゃん。
確かに連れてくるのは大変そうだが、それだけで2億も貰えんなら安いもんだ。
『では、我はもう行くとしよう。頼んだぞ』
「おう。またなー」
俺はボルシャックに手を振ると、心の中で小さくガッツポーズをした。
……よし。これで借金の不安に襲われる事もない。
「でも京夜さん、どうするんですか? ガイアドラゴンを連れ出すなんて……」
俺が喜んでいると、ライアそんな事を言ってきた。
……まあ、言われてみればそうなんだよなあ。オリぶっ壊してでも連れ出してやろうか。
「いや、それよりもまた街に戻るってことが俺は嫌なんだけど。また逮捕されるだろうし」
「……じゃあ変装でもしていけば?」
「……は? 何に?」
「これだよ」
そう言って、アークが取り出したのは……
「ざけんな」
俺はアークの持っていた物を地面に投げつける。
―――――アークの持っていた物は、ゴリラマスクだった。
……何? 何なの? 俺にこれで何をしろと?
「それでゴリラのオリにでも入ってればいいじゃん。結構それリアルだから、気付かないと思うよ」
「おお。いいじゃないかアーク。京夜、これは名案だぞ」
「……あのな、お前ら……」
俺はこめかみを押さえ、その場にガクッと崩れ落ちた。
そうか、そうきたか。ゴリラに変装ときましたか。
俺が若干涙目になっているのを無視し、アークはなおも続ける。
「で、ゴリラに変装して、ガイアドラゴンのオリをこじ開ける。そしたら、多分ゴリラが脱走したとしか思われないでしょ?」
「……」
……イジメかい? これ。




