ドラゴンクエスト
ドラゴンは、俺に向かって。
『人間、我の声が聞こえるか?』
「……聞こえてるけど」
俺は動物だけではなく、モンスターとも話せる。
な、何なんだ。何故俺に話しかける。
『ほう、ドラゴンの言葉を理解できる人間に会うのも久しぶりだ。……少し汝らに、聞いてもらいたいことがあるのだが』
「……襲ったりしない?」
『何を言うか。先ほど我は転がっていたが、人間を襲った覚えはないぞ』
「…………」
まあ、言葉で解決できるならいいか。
俺はふう、と息を吐くと、チラリと3人の方を見る。
「お前ら、このドラゴンが何言ってるか分かんねえよな?」
「分かるワケないじゃないですか。それよりも、このドラゴン……」
「どした?」
驚愕の表情を浮かべるライアに疑問を覚え、俺は再びドラゴンの方を見た。
するとドラゴンは、嬉々とした表情で。
『はっは! 我の事を知っているか。……我の名は、ボルシャック。4龍の内の一匹でもある、超強いドラゴンである!』
……。
どうしよう、もう俺帰ろうかな。
「そうかそうか。じゃあ俺はもう帰るよ。元気でな」
『待て! 聞いてもらいたいことがあると言っただろう!』
「うるせえ! 正直言ってこれ以上めんどくせえ事になるのは嫌なんだよ!」
俺は踵を返し、その場から立ち去ろうとした。
本当なら残り二匹の炎の精霊を捕獲したかったのだが、もうこの際仕方がない。
しかし俺の肩をコハクがガッと掴んできた。
「おい、何だよ。いい加減俺はもう厄介事に巻き込まれるのは嫌なんだ。早く帰ろうぜ」
「まあそう言うな。アイツは、最強と呼ばれる4龍の一匹だぞ? 話を聞いてみる価値はある」
「……」
なんか断るも断るで面倒くさい気がしたので、俺は素直にボルシャックの元へ戻った。
……はあ、こうならとっとと終わらしちまうか。
「で、話ってなんだよ」
『うむ、まず最初に訊くが……汝ら、ガイアドラゴンという名の4龍を知っているか?』
「……」
ええ、知ってますとも。
もっとも、俺が目つぶしを喰らわせたワケだが。その後牢屋に入れられ、ホントロクな事が無かった。
「ああ、知ってるけどよ。ソイツがどうしたんだよ」
『うむ、どうやらガイアドラゴンは、動物園のオリに閉じ込められてるらしくてな。どうにかして、助けたいんだが』
「……なんで?」
『ガイアドラゴンは、我の数少ない友達でもある。話し相手がいなくなった今、我はとても暇なのだ。暇すぎて暇すぎて、仕方ないから火山に来たのじゃ』
ああ、めんどくせえ。
俺が「目つぶし喰らわせちゃった! てへっ☆」なんて言ったら、一体コイツはどんな反応をするだろう。絶対怒る。だからめんどくさい。
「……お前ら、なんかコイツは、ガイアドラゴンを動物園から助け出したいんだとよ。数少ない友達だったらしいぜ」
「何それ。めんどくさい」
「うん、分かるけどそれ言ったら本末転倒だろ」
俺がボルシャックの言った事を3人に説明すると、アークがめんどくさそうに答えた。
聞いてどうすんのこれ。俺らにやれってか?
そんな俺たちの心境を察したのか、ボルシャックは。
『うむ、確かにそれを頼むには対価が必要であるな。……ならば、もしこれをやってくれたら2億ゼニーを汝らにあげるとしよう』
「よし乗った」
―――――2億。
借金をすぐに返せる値段である。




