アイテムを買いますか?
「いや、ですからなんで土下座なんかしなくちゃならないんですか?」
クエスト受付窓口にて。
俺はハンターカードを作るべく、受付窓口へと向かった。
が、しかし。
「ハンターカードを作るということは、それだけの覚悟を背負うということです。ですから、神へと向かって神聖なる尊敬の気持ちを露わにしなくてはならないのです」
俺はハンターカードを作りに来たんだが、突然の土下座しろという要求にうろたえていた。
係員さんがそれっぽいこと言ってるが、土下座させる神様なんてふざけてんだろ。
昔話みたく「ハハーッ」とでも? そんな神、今すぐ撲滅させてやりたい。
「必ずしなくちゃいけないんですか?」
「ええ、一応ルールですから。しないなら、カードは諦めてもらうということで……」
「ああ!? 分かった! やりますから!」
俺は新しいカードをしまおうとする係員さんを引き止め、見事なジャンピング・土下座をかました。
「……はい。ありがとうございました。それでは、あなたのステータスを調べますので、こちらのゲートへお入りください」
土下座時間は意外と早かった。
いやまあ、街の人にジロジロ見られてたから、良かったんだが。
それよりも係員さんのかわいそうな人を見る目をやめてほしかった。ひどいよね、やれって言っといてそんな目するなんて。
俺はゲートをくぐり、係員さんの反応を待つ。
すると係員さんは信じられないといった表情で、俺に詰め寄ってきた。
「はあ!? なんなんですかこの数値! 魔力ポイントが人間離れしてるんですがっ―――――他のステータスはともかく、あなた、人間なんですか!?」
「っつ……」
ああ、そうだよ。俺はもう純粋な人間じゃない。
まあ、そりゃあ悪魔だからな。魔力が尋常じゃなかったとしても、不思議じゃないし。
「ええ、まあ僕、昔から魔力だけは高いんですよ。あと僕は、一応人間です」
「は、はあ……まあいいでしょう。久々に驚かせてもらいました。それではカードの作製は完了しましたので、今後ともそのカードで自分のステータスを確認していってくださいね」
係員の人から渡されたカードを受け取ると、俺は先ほどの雑貨屋に行くことにした。
しかし、さすが俺。とっさにつく嘘が上手い。
雑貨屋の中は、当然だがいろんな物が置いてあった。
冒険に使うライトや短刀や、虫取り網なんかも置いてある。
しかし俺が気になるのはそんな物ではない。俺はアイテム売り場の方に行くと、目を輝かせた。
「うおお……すげえ、なんかいっぱい置いてある!」
そう、コレだよコレ! 俺が求めていた異世界っぽいアイテムは!
俺は一通りアイテムを見ると、取りあえずティールに言われたスキルドリンクを買ってみることにした。 他にも強化剤だったり爆弾だったり、いろんなものがあるのでついつい目移りしてしまう。
俺が他に何を買おうか迷っていると、ある一つの物に目がいった。
「……これは……魔法の杖? おおっ、これいいじゃん! なんか魔法ガイドブックみたいなのもついてるし! よーし、コレ買お!」
俺は会計を済ませると、早速魔法の杖を手にしてみる。うーん、なかなかにカッコいい。
ただ、今の買い物で所持金がだいぶ減った。結構高級な杖買ったしなあ……
「ま、いいか! 適当にクエストやっていけば!」
うん、気にしてはいけないヤツだ、コレは。
なんか最近いろいろめちゃくちゃなことが起きすぎているせいか、どこらへんまでが気にしなきゃいけないレベルかが分かるようになってきた。
さっき出現した魔物ライオンもどきのことすら忘れかけてたしな、俺。
ていうかアイツ名前なんていうんだろう。「ライオンもどき」としかあだ名が思いつかないんだが。
あいにく俺はネーミングセンスの良さは持ち合わせていない。魔物モンスターだというのにこんなヘンテコな名前つけてしまって良かったのだろうか。
ま、もうどーでもいいや。
「さて! アイツらにこの杖、自慢してくるか!」
俺はウキウキ気分で歩き出した。
……0.5秒後には石につまずいて転ぶということも知らずにね。