謎の炎玉
「……ちょっと待て。なんか1キロぐらい先にスゲエのがいるんだけど。何アレ?」
「む、どうした?」
「いや、なんかよく分かんねえけどやたらデカい炎の玉なのがいるんだよ」
敵察知も姿までよく見えるワケではないが、炎の玉が近づいてきているという事は分かる。
……しかし。
「……なあ、なんか近づいて来てる気がすんだけど」
嫌な予感がした俺は、すぐさま3人に逃げるぞと言って逃走を開始しようとした。
しかし背後から聞こえてきた轟音に、俺は思わず振り返る。
――――――すると、そこには。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
――――――さっきの炎の玉が、俺たちに向かって転がって来ていた。
クソッ、ヤバい。
「ッ……お前らあ! 下がってろ!」
転がってくる炎玉を俺は何とかスパエメちゃんソードの腹で受け止めると、何とか俺は踏ん張ってソイツを止める。
痛い。手が痛い。
「アーク! 同時に必殺魔法撃つぞ!」
「え!? ……うん、分かった!」
俺は右手に持ったスパエメちゃんソードで炎玉を押さえながら、叫ぶ。
「「『ウォーターデッド・ファイナルフリーズ』!!」」
俺とアークの放った魔法が、炎玉へと放たれた―――――!!
――――――が、しかし。
……何故か、炎玉は凍らなかった。
「……倒したかな?」
「あっ、バカお前そんな事言ったら絶対!」
俺の叫びもむなしく、炎玉はゆっくりと動き出した。
なんとかスパエメちゃんソードで止めようとするも弾かれ、炎玉は俺たちを潰すべくゴロゴロと転がってくる。
「バカお前! バカか!? そんな事言ったら絶対フラグになるって分かんねえのか!?」
「だってだって! ホントに倒したと思ったんだもん! ……ってあああああ! 追いつかれるうううう!!」
……多分、デカすぎて氷水魔法が効かなかったんだろう。そりゃあそうだ、水の生成量も限られてるし、大体あんな巨体をすべて凍らせるなんて無理だ。
少し考えれば、気付けた事かもしれない。
「あ、もう私限界……きょーや、おんぶ……」
「はあっ!? ちょ、お前なんで今あああああああああああああ!?」
すぐ後ろに迫って来た炎玉に絶叫しながら、俺はすぐにアークを背負い逃げ出した。
マズイ、追いつかれる。
「おいお前ら! どうにかしてアイツ止めらんねーか!?」
「……分かりました。こうなれば一か八か、私がやりましょう」
ライアは鞘から炎の剣を抜き取ると、炎玉に向かって剣を正面に構えた。
「おい、無理だろ!? 下がれ!」
「このまま逃げても追いつかれるだけですよ! だったらこうした方がまだ可能性はあります!」
「……。分かった」
もっともな意見に俺は頷くと、鞘から再びスパエメちゃんソードを引き抜いた。
確かにこのまま逃げても追いつかれる。だったら、止めるしかないだろう。
「京夜、私は遠くから矢で援護する。何とか二人で止められるか?」
「ああ、大丈夫だ。それより急げ! もう来る!」
いつの間にか炎玉は、すぐ近くまで来ていた。
俺はアークをコハクに預けると、すぐさまスパエメちゃんソードを炎玉に対して正面に構える。
何故かは知らんが炎玉の速度が増してる気がする。怒ったのだろうか。
しかし、今はそんな事は気にしていられない。
俺はスパエメちゃんソードを握る手に力を込め、叫ぶ。
「「ああああああああああああああああああああああああっ!!」」
俺とライアの剣が、炎玉を食い止めた―――――!




