魔法習得完了
「んで。レイン、お前は俺の魔力がバカ高いのを知ってるな?」
「はい。でも魔力だけじゃ魔法というものは成り立ちませんよ? 体力だって必要ですし」
「……まあ、取りあえずなんか使い勝手いいの教えて」
城の近くの森にて。
俺は魔法を覚えるべく、レインにそう訊いていた。
……そろそろ本当に新しい魔法を覚えたい。
ちなみにプチ・サンダーとサンダー・レインはお仕置きにしか役立たないのだ。多少モンスターを怯ませることはできるが、もう少し威力が高いのを覚えたいところである。
「使い勝手ですか……。じゃあ、氷水魔法なんかどうです? 地面を凍らせることもできますし、おススメですよ。後は……創造魔法とか? いや、でも京夜さんに教えたら絶対悪用しそうな気が……」
「おい、そこまで俺には信頼がないのか? 大丈夫、なんもしないよ」
「……本当ですね? じゃあ、まずは氷水魔法から覚えましょうか。そうですね……アークさん、ちょっといいですか?」
「え、私?」
レインは近くにいたアークに手招きすると、何やら深く深呼吸し始めた。
なぜかライアとアークとコハクの3人はついてきた。暇なんだろうか。
……当然、アルゼルトとシオン、あとピピは置いてきたワケだが。
「アークさん、ちょっと水掛けてもらっていいですか?」
「……? うん、分かった。『ウォーター・レイン』」
「さむいあちゃああああああああああああああああああああ!? おま、ちゃぴゃああああああああ!!」
「あ、ごめん……プッ」
俺の頭上にアークの生み出した水は降り注いだ。
わざとだ。絶対わざとだ。
俺が暴れまわっていると、レインは落ち着いた表情で。
「では皆さん、見ててくださいね。……それっ」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」
俺の体は、一瞬で氷に包まれた。
「今、私が息を吹きかけたら水が凍りましたよね? こんな感じで、『念じる』ことが大切になってくるんです。私は魔法は使えませんが、一応天使なのでこういった小さな事はできるんですよー」
「「おお……」」
ライアとコハクが、感嘆の声を上げた。
……。
「あ、京夜さん助けてなかったですね。……あれ、どうしましょう。私凍らせることは出来ても、溶かすのはあんまり得意じゃないんですよねえ……」
「もういっそそのままでいいんじゃないか?」
「……そうですね」
俺は氷の中で無言でスパエメちゃんソードを鞘から抜くと、すぐさま氷を斬り砕き脱出した。
……ありがとう、レイン。何故か知らないけど、もう魔法のコツを覚えちゃったみたいなんだ。
確かコレは杖を買った時ついてきた魔法ガイドブックにも、書いていた魔法である。コツもつかめたし、後は使うだけだ。
俺はゆっくり息を吐くと、その魔法を唱える。
「『フリーズ・デッドウォーター』」
「「「「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」
俺の放った氷水魔法が、4人へと炸裂した。




