魔法を覚えたい。だがアークはお断り
「ただいまですー!! ……あれ、どうしました?」
プルプル震える二人を俺が眺めていると、部屋にレインが入って来た。
……まあ、取りあえずコイツらは放っておこう。
「レイン、お前何しに行ってたんだよ。街に行ったとか言ってたけど」
「ああ、色んなアイテムを買いそろえておこうと思いまして。……あ、あとおやつも買ってきましたよ」
「……」
レインが持っていた袋の中から、次々とアイテムやらお菓子やらが出てくる。
……はあ、まあいい。取りあえず借金についてはこれからゆっくり考えるとしよう。
俺はお菓子の中からクッキーを取ってそれを口に運ぶと、レインに言う。
「なあ、借金どうすりゃいいと思う? 正直2億とか無理なんですけど。クエスト行ってコツコツ返すしかないの?」
「いや、むしろそれ以外ないじゃないですか。まさか強盗でもする気ですか?」
「しねえよ。……もっと楽に返せねーかなーって思って」
俺はぐでーっとテーブルの上に突っ伏した。
もっと楽に金稼ぎができたらなあ。というかまず難しいクエストをクリアできないという時点でダメだ。
やはりここは多少俺たちの実力を上げる必要がある。いつまでも強敵相手に逃げ回るワケにもいかない。
……よし。
「なあ、レイン。お前、魔法の創造者なんだよな?」
「もちろんです。魔法の事なら私にお任せを」
そう言ってレインはエッヘンと胸を張って見せる。
……魔法を使えないダメ魔法使いという事は、今は触れないでおいてやろう。
「そりゃあ良かった。……じゃあレイン、お前、俺に魔法教えてくんない? 見本を見なきゃ魔法が習得できないってわけでもないだろ?」
「……まあ、そうですけど。でもアークさんがいるんじゃ……」
そう言ってレインはアークの方をチラリと見る。
……いや、ねえ?
「だってアイツが多分一番の問題児だもん。さっきだって俺に必殺水魔法ぶちかましてきたんだぜ? そんな奴に教わるなんて、危険すぎるだろうが。それに、お前の方がなんかいっぱい魔法知ってそうだし」
「おい。きょーやー?」
ポキポキと指の骨を鳴らして俺へと歩み寄ってくるアーク。
……げ、気付いたか。
「おい、取りあえず落ち着けよ。ホラ、な? でもお前も前に比べたら随分と成長したじゃねえか。必殺魔法使っても全然倒れなかったし。そりゃあまあ寝言で、肉が牛が鳥がだの言うのはどうかと思うけど、それ以外はもう全zぎゃああああああああああああああああああ!?」
「――――――バカ……」
俺の手をつねりながら、アークは俺から目を逸らしてしまった。




