サボりモンスター
「……京夜。まず、何があったか教えてはくれないか?」
炎の精霊&熊にボコボコにされ、燃えつくされた後。
俺たちは何とか城へ戻ると、レーディルに事情を説明した。
「いや、借金返そうとしてちょっと難易度高いクエスト行こうとしたんだけどさ。燃えつくされて無理だったんだよ。コイツらは燃えながら俺に近づいてくるし、炎は燃え移るし」
「なに自分は問題犯してないみたいな言い方してるんですか。京夜さんが一番燃えてましたよ」
「うむ、それは私も思う」
「うん。きょーやが一番燃えてた」
「いや、だってお前ら」
「貴様ら全員、問題犯しただろう?」
「「「「…………」」」」
もっともな意見に、俺たちは黙り込んだ。
当然、熊には勝てるワケもなく、俺たちは半泣き状態で火山の外へと戻ったのである。
炎の精霊も多すぎて俺たち4人じゃ相手できないし、炎が燃え移るばっかりだ。
あんなの、勝てるワケが無い。何を考えているのだ、あのクエストを依頼した人は。
上級者のハンターという事で期待されていた俺たちだったが、無理だから。
「……で、帰って来たというワケか」
「そういう事だ。……それよりも」
俺はチラッと、部屋の隅にいた人物を見た。
そこには、アルゼルト、シオン……ピピ。
「……なあ、頼むからお前らも手伝ってくれよ。俺たちだけじゃ無理だ」
「嫌よ。私たちはハンターじゃない、モンスターなのよ? 初心者でもない上級者でもない『モンスター』なら、参加する必要なんかないじゃない」
「そうですよ。私たちはしばらくここでのんびりしてます」
そう言って床にゴロンと転がるシオン。
どさくさに紛れてピピもゴロゴロしてやがる。くそっ、鳥類だからいいってか?
そんな事言ったら俺だって悪魔だ。当然、借金返済なんかしたくない。
……。
「そういえばレインは?」
「ああ、レインなら何か用があると言って街に出かけたぞ」
なるほど、いなかったのはそれだからか。
にしたって随分遅くないか? クエストに誘おうとしてもいなかったから仕方なく4人で行ったというのに、まだ帰って来ていないとは。
……まあアイツがいたところで、なんの戦力にもならないけど。
「京夜ー? ちょっとお酒持ってきてよ。私一応成人してるのよ? 20歳だし。まあもっともモンスターだから年齢なんてどうでもいいんだけどね。ホラ、早くしてー?」
「あ、私もお酒ください。美味しいのお願いします」
「ねえ、早くしてー? 早くしてー?」
何コイツら。腹立つ。
シオンが大人ぶっているのはちょっと微笑ましいが、こんな扱いをされるのは良い気分ではない。
……。
「『サンダー・レイン』」
「「ひゃあああああああああああああああああああああ!?」」
俺の放った渾身の電気魔法が、二人へと炸裂した。




