回復技をおぼえよ!
「アンタ、名前はなんていうんだ?」
歩きながら唐突に、そんなことを訊かれた。
「俺か? 俺は、京夜っていうんだ」
「ギャハハ!! 随分変わった名前してるんだな」
「笑うんじゃねえよ」
……まあ、そう言われちゃあそうだけど。
やっぱりここは異世界だから、言葉は通じても、名前は違うっぽい。なんか別の名前考えときゃよかったかな。
例えば、ゼウスとか、ラファエルとか。神様だけどな。
「よし着いたぞ、今から京夜には、回復技の中でも難易度の低いものから学んでもらう」
えー、俺なら難易度上級でも3秒で覚えられるのに。
スミマセン調子こきました、ウソです。
「分かったぜ。回復量も違ってくるのか?」
「ああ、もちろん違うが、その分使うスキルポイントが違うんだ。スキルポイントを回復させるには、そこらへんに売ってるスキルドリンクを飲めばいいぜ」
「へー」
確かに周りには、いろんなものが売ってる雑貨屋さんみたいなのがある。
思えばアイテムって一回も使ったことないな。後でなんかしら買ってみるか。
肉体強化剤とかも売ってんのかな。
「よし、じゃあ最初に、お手本を見せてやるよ。……最初にっつっても、見るだけで基本覚えるんだけどな。そら、いくぞ」
そうティールが言うと同時に、ティールの体は光で包まれていく。
「『ライフ・エナジー』!」
「おおおっ!!」
光が消えると同時に、俺は歓声を上げていた。
これって、さっきライアが言っていた技か。
なんかこれこそ、魔法っぽい魔法な気がする。
「アンタ、ハンターカード持ってないのか? クエスト受付窓口で作ってもらえるぜ? ……まあいいや、とりあえず『ライフ・エナジー』って叫んでみろよ」
ええ?
本当にそんなんで、発動できるものなのだろうか。
俺はゼルドギアを倒したからということで少し街では有名になっているが、実際は剣の扱いとしても、狩人としてもまだまだ初心者ハンターだ。
俺もうハンターやめて、いっそ商売人にでもなろうかな。
そう思いつつも多少の期待を込め、俺は技名を叫んでみる。
「……じゃあいくぞ? 『ライフ・エナジー』!!」
俺は出来るだけ大声で叫んでみた。
すると不思議なことに、複数の光が現れ、俺の体を包んでいく。
「お、おおっ!? スゲエエエエエ!!!」
気付けば朝の眠気も疲れもどこかへ吹き飛び、俺の体は超元気になっていた。
すげえ、これが魔法か。
「よし、覚えたな? 一回で覚えられないマヌケヤローじゃなくて良かったぜ。ちなみにこれは、他人に使うこともできる。もちろん、慣れないと難しいけどな」
「へー……すげえな、魔法って」
俺は思わずそんなことを口ずさんでいた。
取りあえずマヌケヤロ―にならなくて良かったと思う。この人、失敗したらめっちゃバカにしてきそうだもん。
「……? アンタ、魔法については詳しくないのか? まあ、その様子じゃ剣でゼルドギアに挑んだみてーだけど……まあいい。めんどくせーことは訊かねーぜ。それより早くハンターカード作ってもらって来い」
そういってティールは、俺の背中を押した。
視界の先には、先ほど見つけたクエスト受付窓口が映っている。
「おし、分かったぜ。ありがとな、ティール。どっかでまた会おうぜ」
「いいってことよ。がんばれよ、京夜」
そう言ってティールは去っていった。
……ヤベえ、ヤベえぞコレ。
佐々木京夜17歳、超久しぶりに男友達ができました。
まあもちろん部屋に引き籠っていたら、人と接する機会も少なくなるのだが。
しかし仲良く話せるような男友達ができたことは、俺にとってかなり嬉しかった。
「……さて。じゃあ、ハンターカードでも作りに行くか」
俺はティールに教えてもらったことを忘れない内に、クエスト受付窓口へと足を向けた。
男友達、みなさんいるでしょうか。とにかく笑う明るいキャラを投入したかったので、書いてみました。
さて! この小説もそこそこ長くなってきました。
1章が終わるのは……40000文字以上になってからかな?
のんびり長く続けていきたいと思います! 引き続きよろしくお願いします!